侵攻で浮かびコロナで落下、マクロンの「綱渡り」 4人の戦いとなったフランス大統領選の行方
2022年2月7日にマクロンはモスクワに飛び、プーチンとの会談に挑んだ。この会談の様子はニュースでも流れており、その状況は周知の事実だ。クレムリンで、両首脳は長い白い大理石のテーブルの端と端に座り、よそよそしい顔つきで議論をしていた。このテーブルの距離に比例するように、お互いの話は合意を得ることなく離れていった。
マクロンが思うような成果を得られなかったのはなぜか。そもそも今回話をこじらせているのは、この4カ国にアメリカが介入していることである。マクロンの背後にアメリカがちらついている。そのことをプーチンも気づいていた。
その後もマクロンはプーチンと何度か電話対談をしているが、結局プーチンには、マクロンがEUの代表ではなく、アメリカからのメッセンジャー・ボーイに見えたはずである。マクロンはこのパフォーマンスで大統領選での自らの支持率を圧倒的に優位にするつもりであったが結局、思ったような支持率を上げられずにいる。
アメリカの影にフランス国民が憤り
さらに、マクロンにとって致命的になりうるスキャンダルも、2022年3月に起こる。マッキンゼー問題というものだ。フランス上院の委員会が、2022年3月16日に提出した報告書が、今フランスで物議を醸している。この報告書の内容に国民が怒ったのは、マクロンが顧問にアメリカの企業を使っていることであった。重要な決定に、例えばファイザーなどのアメリカの企業が介入していたとすれば、国民が怒るのは当たり前だ。
2020年のコロナ禍以来、国民は外出禁止にマスク着用、ワクチンの義務化などなど、フランス政府の国家主義的強権に対して怒りを持ち続けてきた。それによって、マクロンが大統領就任の年から続いていた「黄色いベスト運動」(イエロー・ジャケット運動)という市民運動に加えて新たな運動である「反ワクチンパス運動」が盛り上がることになった。
上院の報告書は「578号、2022年3月16日 上院議長への報告書」というものである。そこにはマッキンゼーやボストン・コンサルティングといったアメリカ企業から、政策決定のためのコンサルタントとして4000人が雇用されているという事実が暴露されていた。問題はとくに、政治への私的企業、とりわけアメリカ企業の介入、そしてその費用が10億ユーロ(約1354億円)を超えるとされ、フランスの国税がアメリカの私企業のために使われていることがわかった。しかも、これがマクロンの時代に増えているというのである。
マクロンとセレブとの関係、そして以前勤めていたロスチャイルドとの関係は前から言われていたが、フランス人がもっとも嫌がるアングロ=サクソン、すなわちアメリカとの関係が暴露された。これが大統領選挙を左右しないわけにはいかないだろう。
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