花粉症の人の仕事効率「いつもの6割程」の大問題 国内だけでなく「世界」でも患者数は増加の深刻

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花粉症は、「国民病」とも言われることがあるが、日本国内だけでなく、世界中で問題となっている。

世界アレルギー機構(World Allergy Organization)のWorld Allergy Week 2016の報告資料によると、13~14歳の小児における花粉症の有病率は、世界全体で22.1%だった。

地域別にみると、アフリカ29.5%、アジア23.9%、東地中海20.1%、インド亜大陸15.8%、中南米23.7%、北米33.3%、北欧・東欧12.3%、オセアニア39.8%、西ヨーロッパで21.2%だった。過去15年間を平均すると年間平均0.3%増加しているという。

また、同報告資料によると、気候変動によって、花粉の飛散期間の長期化や、飛散量の増加が指摘されている。例えば、二酸化炭素(CO2)の増加と気温の上昇は、ブタクサなどの花粉生産量を大幅に増加させるほか、シラカバ、ヨモギ、イネ科、スギなどのアレルギー誘発植物を対象とした研究でも、花粉飛散開始時期の早期化が確認されているという。

地域によって生育する草木が異なるため、花粉症を引き起こす草木も異なり、ヨーロッパの各地ではイネ科、アメリカではブタクサなど、オーストラリアではアカシア(ミモザ)、南アフリカではイトスギが有名だ。スギは日本固有種であるため、スギ花粉症は日本の特徴だ。

現在、外務省による海外渡航・滞在情報の各国の医療情報には、相当数の国でその国の花粉症に関する情報が記載されており、関心の高さと深刻さを伺うことができる。

国の対策は?

スギは、二酸化炭素を大量に吸収するほか、材木として加工がしやすく、成長スピードも速いため、積極的に植林されてきた。日本では、1960年代に花粉症の最初の系統的な研究が行われており、ブタクサ花粉症やスギ花粉症が報告されている(安髙志穂「国会における花粉症対策に係る議論の動向-国会会議録を分析して-」Journal of Forest Economics Vol.65 No.1〈2019〉)。

スギ花粉症対策として、国内では、花粉の少ないスギや花粉を出さないスギの苗木への植え替えが進められている。林野庁の「スギ花粉発生源対策推進方針(2018年)」では、2032年度までに、この割合を7割にまで増加させることを目標としており、2019年時点で、花粉の少ない苗木の生産量は、スギ苗木の全体の半数程度となっている。

林野庁「森林・林業とスギ・ヒノキ花粉に関するQ&A」によると、花粉が生産されるのは、樹齢30年程度だが、国内の人工林の多くが植えられて30年以上となっている。

安価な輸入材木の増加やほかの素材の利用増加にともなって当初の予想どおりに伐採が進んでいないことや、花粉症対策スギ苗木の供給不足などによって、植え替えにはまだある程度の時間を要することになりそうだ。

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