金融市場が最も警戒していた「SWIFT遮断」によって、経済・金融情勢にどんな変化が起きるのか。
ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに対する西側陣営による制裁措置の「最後の一手」として、国際的な金融情報通信ネットワークであるSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)遮断が遂に実行される運びとなった。
「金融の核兵器」(ルメール仏財務相)とも形容されるSWIFT遮断は影響度が極めて大きく、とりわけドイツ、イタリア、オーストリアといった欧州主要国が反対してきた。例えばベアボック独外相は「鋭い刃が、必ずしも賢明な手段ではない」と慎重姿勢を明言していた。
しかし、ロシア軍の首都キエフ侵入、停戦交渉打ち切りなどが報じられる中、2月26日、反対していた欧州主要国も強硬姿勢に転じ、合意に至ったようだ。金融市場が最も警戒していた「SWIFT遮断」によって、経済・金融情勢にどんな変化が起きるのか。
以下では筆者への問い合わせが多い6つの論点に絞り、Q&A形式で現状を整理してみたい。
Q2:ロシア以外の国にどんな影響が出るのか?
Q3:ロシアの外貨準備はまったく換金できないのか?
Q4:SWIFT遮断による欧州への影響は?
Q5:SWIFT遮断以外のロシア制裁は無意味なのか?
Q6:先進国中央銀行の正常化プロセスはどうなるのか?
Q1:「SWIFT遮断」でロシア側にはどんな影響が出るのか
SWIFT遮断の影響はロシアとそれ以外という2つに分けて整理する必要がある。ロシアにおいては「通貨危機」、ロシア以外においては「資源価格の上昇」が警戒される。
まず前者から見ておきたい。「通貨危機」という言葉が指す範囲は非常に広く、当該国通貨の価値が短期的かつ急激に毀損した場合に起きるネガティブな経済現象全般を想定した総称といえる。SWIFT遮断がもたらす最大の効果は遮断された国(今回のケースはロシア)で「外貨が取れない」という事態が発生することだ。
いくら原油や天然ガスや穀物を海外で売り上げてもその外貨建ての売り上げがロシアに還流する道筋(SWIFT)が今後は断たれる。現状、ロシアとの貿易取引まで禁止されてはいないが、対価の受け払いができない以上、貿易取引も早晩行き詰まるだろう。
また、海外からロシアに対する証券投資・直接投資といった資本取引も断たれる。こうして貿易・資本取引が完全停止するので、為替市場においてロシアルーブルは圧倒的に売り超過になる。そうなる未来が確実に見えているので、現時点でロシアルーブルを保有している経済主体は売り一択である。
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