「足元の業績はいいものの、不透明感は強いままだ」。銀行の幹部たちはそう口をそろえる。
2021年度の上期決算を終えた銀行業界は、業績予想の上方修正ラッシュに沸いた。業界最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は当初、純利益8500億円としていた通期予想を1兆0500億円に修正、7年ぶりに最高益を更新する見通しだ。
にもかかわらず、慎重な見方が続いているのには訳がある。キーワードは「与信費用」だ。
与信費用とは、不良債権の処理で発生する費用を指す。融資先の破綻に備えた貸倒引当金や、回収できなくなった債権の損失を計上する償却額などがこれに当てはまる。
22年は勝負の年に
今期の決算が想定外の好調となっている最大の要因がこの与信費用だ。当初は新型コロナの影響で企業の倒産が多発することが予想されていたが、実際の倒産は歴史的な低水準となっている。つまり、当初想定よりも与信費用が少なく済んだということだ。中には、融資先の業況が改善したことで、貸倒引当金を取り崩し、戻り益を計上している銀行もある。
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