
にいなみ・たけし 1959年神奈川県生まれ。81年慶応大学経済学部卒業、三菱商事入社。91年米ハーバード大学経営大学院修了。2002年ローソン社長、14年会長を経て同年10月、サントリーホールディングスの社長に就任。内閣府の経済財政諮問会議の議員を14年9月から務める。(撮影:梅谷秀司)
個人消費の動向に敏感な飲料・食品メーカー。その大手であるサントリーホールディングスの新浪剛史社長は、2022年の景気の先行きについて強気だ。他方で、日本経済が活性化していくには労働力の移動、つまり人材の活性化が重要だと説く。
──「22年の日本経済は大いによくなる」と考えているそうですね。理由を教えてください。
最も大きいのは家計貯蓄の存在だ。家計貯蓄はコロナ禍の間に28兆円拡大したといわれる。一方で「消費をしたい」という欲求が、人々の中でマグマのようにたまっている。消費刺激策もあり、それが噴き出すだろう。
もう1つは賃金上昇。とりわけ非正規やサービス産業の従業員の賃金が上がってくる。グループ内に飲食店を持つわれわれも、人手の確保に苦労している。「オミクロン株」などコロナ禍が続く中では、入国制限があって海外の人材にも頼れない。賃金を上げないと働き手に来てもらえない状況だ。
22年前半は企業が賃金を上げる。そして年後半は、ITやデジタルなどツールの導入で、企業が生産性を上げる動きに出る。企業がデジタル関連の投資を増やすことに伴い、関連分野の雇用が増える。そういった「正の循環」が起きるのではないか。
ただ、23年以降も賃金が上がり、雇用も増えるには、投資で生まれたデジタルなどの成長領域に、労働力が移動していく必要がある。
──足元では世界的にインフレ懸念が強まっています。日本でも景気回復に水を差しませんか。
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