名門「オンキヨー」筋の悪い増資で迎えた末路 万策尽きて上場廃止の回避ならず

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引き受け手に有利すぎる「悪魔の増資」

MS(ムービングストライク)とは、転換社債なら転換価額、新株予約権なら権利行使価額が変動するのが特徴で、引き受け手は決められた期間の株価に対して90%といった割安の価額で株式を入手できる。

こうした金融商品の場合、引き受け手は事前に株を借りてきて(借り株)、MSCBやMSワラントの価額決定期間にカラ売りしたうえで90%の割安価額で株式を入手する。その株式を借り株の返還に回す。この一連の取引を繰り返すことで極めて低いリスクでほぼ確実に10%超のサヤを抜ける(実務上は毎回借り株と返還を繰り返すわけではない)。

カラ売りによって株価が下がりやすいこと、CBの場合は発行株式数が当初予定より大きく膨らみ、さらなる株価の下げ圧力となることなどから(ワラントの場合、希薄化は計画通りだが資金調達額が計画を下回る)、市場では「悪魔の増資」と呼ばれている。

経営危機に陥った会社にリスクを取って資金を提供するのなら、引き受け手はしかるべきリターンを得る権利がある。しかしMSCBやMSワラントの問題は、本来公正であるべき株式市場で、引き受け手だけが確実に取引で勝てる(儲けられる)“ジョーカー”を持つ点にある。一方、他の株主はその割を食っていることになる。

オンキヨーの場合、経営悪化が深刻化した2016年以降、特にケイマン諸島に本拠を置くEVOファンドにMSCBやMSワラントを度々発行してきた。加えて、MSの新株発行、最終的には行使価格が発表時株価の約4分の1(5円)という有利発行の新株予約権でも資金をかき集めた。

それとは別にデット・エクイティ・スワップ(DES、債務の株式化)を1年間で2度も行った。しかし本業の赤字が止まらず、債務超過解消はできなかった。

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