アパレル企業によるTOBを発表した、外食中堅のゼットン。筆頭株主のDDホールディングスは「寝耳に水の裏切りだ」と不満をあらわにする。背景にある軋轢とは。
コロナ禍の長期化で正念場が続く外食業界。窮地に陥った大手企業に“子”が見切りをつけ、異業種に駆け込む動きが出てきた。
2021年12月、アパレル大手のアダストリアはハワイアンレストラン「アロハテーブル」などを展開するゼットンのTOB(株式公開買い付け)を発表した。2022年2月16日までに株式の51%を上限に、1株950円で買い付ける。TOBが成立すればゼットンはアダストリア子会社となり、上場は維持する見通しだ。
筆頭株主の外食大手「裏切りだ」
両社が協議を開始したのは2021年4月ごろ。少子高齢化などの影響でアパレル市場が縮小傾向にある中、「グローバルワーク」などのブランドを擁するアダストリアはかねてアパレル以外の収益源を模索していた。2017年には子会社を設立し、スムージー専門店「Jamba(ジャンバ)」などを展開。そうした中、衣食住を含めたライフスタイルを提案するという事業の方向性が一致したゼットンを子会社化することを決めた。
TOBに先立つ2021年12月末、ゼットンは第三者割当増資によりアダストリアから約13億円を調達している。コロナ禍で収益低迷にあえいでいたゼットンは、これらを借入金の返済や運転資金に加え、成長投資にも使う計画だ。
ゼットンは成長戦略の柱に、パークPFI制度(公募設置管理制度)を活用した公園開発事業を掲げている。2022年4月には名古屋市の徳川園でのレストラン運営や庭園整備などに携わる予定で、その費用としておよそ4.5億円が必要だったという。
だが、そんなゼットンに不満を隠さないのが居酒屋「わらやき屋」などを展開するDDホールディングス(HD)だ。2021年8月末時点でゼットンの株式を37.4%保有する筆頭株主であり、コロナ前までは4割超の株式を保有する親会社だった。同社幹部は「寝耳に水の裏切りだ。怒りを通り越して寂しさを感じる」と打ち明ける。
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