名門「オンキヨー」筋の悪い増資で迎えた末路 万策尽きて上場廃止の回避ならず

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超がつく有利発行で増資

振り返ると、1株5円(行使価格は固定)の第10回新株予約権は他の株主にとって罪深い代物だった。

2020年12月16日に発表されたのは第10回新株予約権に加え、第11回新株予約権、第12回新株予約権の発行だ。いずれも引き受け手はEVOで、これらの権利が行使された場合に払い込まれるのは、第10回が12億円、第11回が25億円、第12回は25億円に相当する株式にによる現物出資となっていた。

第10回は前述のように有利発行で、第11回、第12回とも優先株なので定款変更を必要とするため、2021年1月27日に臨時株主総会を開いて特別決議(3分の2以上の賛成が必要)を得ることが条件だった。

2020年12月末時点で自己資本は32億円のマイナスで、3つ(第10~12回)の新株予約権がすべてが行使されれば債務超過を解消して上場廃止を回避できるかもしれない――。そうした期待からか、特別決議は90%を超す賛同を得て可決された。

その後、EVOは新株予約権を行使して5円で得た株式を時価で売却していく。2021年1月末から3月にかけ債務超過解消の期待もあり株価は主に10円を割り込むことはなかった。大量保有報告書によると株価が30円の高値をつけた2月25日に、EVOは4034万株を売却している。結局、EVOは12億円分の第10回新株予約権の行使によって、20億円超の利益を得たとみられる。

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