天才は、世界がうなるような志を持っている--秋元征紘・ジャイロ経営塾代表(第3回)

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 彼は部下である私たちの価値をナイキのバリューの理解度で判断しており、そうでないと判断するとしばしばポジションから外したり、3~6カ月の休暇を命じたりしました。マイケル・ジョーダンのコンセプトの生みの親で彼の懐刀と言われていたJ.B.シュトラッサーも、最後は彼とけんか別れして米国アディダスの社長に転出していますからね。フィルは確か一昨年社長を辞めて会長になりましたが、今でも同じ感覚でナイキを動かしているのではないでしょうか。

--ナイキの次は、LVMHグル-プのゲラン社長のポストに移られています。

LVMHは老舗ブランド集団ですから、当然ながらほとんどの創業者や創業時のデザイナーはもういません。創業者の生み出したものをDNAとして継承でき、現代に合った新たな提案をして消費者を興奮させることができる、天才的ともいえる創造性が必要になります。

その総指揮者がLVMHの創業者社長ベルナール・アルノーでした。そしてそれは豊富なキャシュフローと傘下の60余りのブランドを徹底的に分社化し、創造性の権限委譲をすることによって達成されたのです。このようにしてある時期には古臭いブランドとさえ考えられたルイ・ヴィトンやゲランを、短期間で現代の世界中の人々から脚光を浴びるブランド、そして高収益なビジネスにしてしまったのです。

デザイナーでいえば、ベルナール・アルノーのお膝元、クリスチャン・ディオールを再生させたジョン・ガリアーノがいい例ではないでしょうか。普通マーケティング的には、ブランドエクイティ等が調査で確認され、さまざまな戦略が検討されるわけですが、ディオールでは彼の天才的なひらめきがブランドをつくり製品を売ってしまうんです。

経済学者のヨーゼフ・アーロイス・シュンペーターは「イノベーションは創造的破壊を生む」と言いましたが、まさに天才が世界を変えるのです。

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