出光、「昭和シェル買収」で強者になれるか 独立路線の出光が動き、再編の号砲
年の瀬が迫る中、石油元売り大手の出光興産が昭和シェル石油の買収交渉に入ったと報じられた。両社とも「決定した事実はない」としつつも、出光は「事業再編に関して幅広く検討しており、昭和シェル石油とも様々な可能性について協議しております」とし、昭和シェルは「他社との提携等の様々な経営上の選択肢について検討しており、その中で、出光興産株式会社とも協議を交渉してはおります」と、交渉を事実上認めた。
早ければ2015年春にも基本合意すると見られており、買収が実現すれば売上高は8兆円を突破し、国内で首位のJXホールディングスに次ぐ規模になる。近年、石油業界では再編圧力が一段と強まっていた。低燃費車の普及や少子化を背景に、石油製品の需要はピーク時の1999年から約3割も減少している。今後も構造的に一段の需要減少が避けらない。独立路線を歩み業界再編には距離を置いていたはずの出光としても、勝ち残りに向けた手を打つ格好だろう。
買収が実現しても残る課題
現在、出光の売り上げは5兆円で業界2位。一方、JXは倍以上の約12兆円の売り上げがあり、業界首位との差は大きい。時価総額で見ると出光の”地位”は見劣りする。出光のそれは3000億円台前半だが、売上高4位(約3.2兆円)の東燃ゼネラル石油は約6000億円と、倍近くの開きがあるからだ。昭和シェル石油(売上高2.9兆円)の時価総額も、買収報道が出る前の時点で3000億円台後半と、出光を上回っていた。
だが、今回の買収が実現すれば、日量100万バレルとJXに肉薄する上、「昭和シェルの製油所は生産効率がよく、儲かる軽油や灯油の割合が高く、競争力が高まる」(SMBC日興証券・塩田英俊シニアアナリスト)。一方で、いくつかの課題も挙げられる。1つ目は、出光と昭和シェルが抱える6つの製油所は地理的な重なりがないこと。このため、効率化を図る拠点の統廃合が難しい。
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