石油元売りの再編は自己責任で行うべきだ 石油連盟の木村康会長に聞く
イラク情勢の緊迫化でドバイ原油価格は6月に入って1バレル=105ドルから110ドル強へ急騰。国内ではガソリン価格の上昇が続く。一方、石油業界では政府主導による第2弾の製油所再編が見込まれる。こうした環境変化を石油元売り業界のトップはどう見ているのか。
──イラク情勢の日本への影響と原油価格の見通しは。
日本のイラクからの輸入量は全体の2%程度しかない。生産輸出施設の大半はイラク南部にあり、供給面で日本への影響は限定的だ。
一方、イラクやウクライナ情勢など、地政学的リスクは予断を許さない。世界的な需要も増加傾向にあり、当面は1バレル=110~115ドルで堅調に推移するとみられる。
──国内のガソリン価格が1リットル平均170円超えも予想される。需要への影響は。
中長期的には、低燃費車への買い替えが進むなどで、ジリジリと需要は押し下げられる。短期的には、ガソリンや車は生活必需品であり、消費量全体としては影響はさほど大きくないだろう。
──経済産業省は産業競争力強化法を適用し、石油元売り各社に今後3年の製油所の合理化策や事業再編計画の提出を求める方針だ。行政の強制的な指導とみられるが。
今年3月末期限のエネルギー供給構造高度化法への対応で石油製品の供給能力はほぼ適正水準に削減された。だが、需要は今後5年で8%減ると予想され、再び設備の過剰感は高まっていく。今後も一定の設備削減は必要となろう。
ただ、需要に合った身の丈にどう変えていくかは、自己責任で行うべき問題だ。今回の政府の方針は「第二次高度化法」ともいえるが、各社が自主的に再編策を判断する環境整備という位置づけであって、強制的に指導するものではないと考えている。
──元売り各社では、石油製品の仕切り(卸)価格体系を市況連動から原油コスト連動へ変更している。
JX日鉱日石エネルギーでは6月から仕切り価格の考え方を変更し、特約店にお願いした。元売り各社は昨年度の(厳しい)経営を踏まえ、一定のコストに基づく価格体系に変えることで、合理性のある市場になることを期待している。最終的には消費者への安定供給につながる。
(原油コスト上昇分の)卸価格への浸透は進んでいる。当然、最大限のコストダウンと説明が必要だが、石油製品は大半が輸入コストであることを理解してもらいたい。店頭価格はコメントする立場にないが、各流通業者もコストを背負っており、おのずと動きが出てくるだろう。現在のガソリンの平均店頭価格167円のうち、68.8円が税金分だということも頭に入れておいていただきたい。
(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2014年7月5日号)
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