早稲田大学、「独自の国際化」の前途 新入生をマレーシアへ送ったワケ

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早稲田大学では、大学生活をはじめたばかりの新入生にアジアを体験してもらう国際教育導入プログラムを作り、2014年4月には、第1回目としてマレーシアのマラヤ大学に新入生16人を送り出した。これが、この連載で早稲田大学を取り上げた理由である。

「まだ大学になじんでいない新入生を送り出すことで、将来の留学へのモチベーションとしてもらうことが目標。勉学やサークル、アルバイトで忙しくなる前に、ぜひ違う世界があることに気がついてほしい」(丸谷課長)。

今回の導入プログラムがマレーシアに決まったのはなぜなのか。「違う世界を知るという意味で、マレーシアという国はとてもいい環境ではないかと思う。異文化に対して寛容で、多様性を受け入れる土壌がある。たとえば、食堂に行くと、お箸で食べている人、フォークで食べている人、手で食べている人といる。こうしたところからの学びも重要だと思う」(丸谷課長)。

留学の前段階として、日本人の学生に英語での学術文章作成指導をするための「ライティング・センター」を2004年に創設するなど、インフラも整えている。

世界を代表するような大学になれるか 

グローバルスタンダードへの適合を目指し抜本的な改革を進める早稲田大学だが、それによって失うものはないのだろうか。欧米と同じことを追っかけて意味があるのか、という疑問がふと湧いてくる。

折しも円安が進む中で、日本は留学お得度が高まっているときでもある。留学生1万人構想へは強力な追い風だろうし、数を伸ばすことは比較的容易かもしれない。しかし学生のレベルを高めながら、世界を代表するような大学に進化することは容易ではないだろう。前途には、まだまだ多くの課題が残されている。

野本 響子 ジャーナリスト

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のもと きょうこ / Kyoko Nomoto

東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が『帝国化』する』(ともに松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね!フェイスブック』(朝日新聞出版)、『マレーシアの学校の○と× アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、現在クアラルンプール郊外に長期滞在中。趣味はオーケストラでの楽器演奏。

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