あのITの巨人は、もともと石鹸会社だった! WIPROのトップは社会貢献にも熱心

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インド大手IT企業のWIPRO。トレードマークのひまわり(写真右)は、小さなせっけん会社だった頃から変わっていない(写真:AP/アフロ)

インド独立の少し前の1945年頃、ある小さな会社が「サンフラワー・バナスパチ(Sunflower Vanaspati)」というブランドの食用油とその副産物から作った「787」という名前の洗濯せっけんを製造していた。その会社とはM.H.プレムジ氏が設立したWestern Indian Vegetable Products Ltd.(後にWIPROに変更)だ。

パック入りのひまわり油を販売

WIPROは、インドで初めてパック入り植物油を販売した会社。それまでインドでは植物油はパックされずにそのまま売られていたが、「サンフラワー・バナスパチ」が発売されてからは、料理をする多くの女性が使用するようになった。

その後、同社には廃油から、せっけんや洗剤を製造する商機が巡ってきた。ここで生まれたのが、787という固形洗剤。WIPROは787の販売の際、すべての農村部でも使ってもらえるように戸別訪問販売モデルを採用。ヒマワリ(サンフラワー)を使った企業ロゴができたのはこの時のこと。現在でもWIPROは、企業の原点を象徴するこのヒマワリのロゴを使用している。

代替わりを契機にWIPROは華麗なる変身を遂げる。1966年にM.H.プレムジ氏の突然の死去を受けて、スタンフォード大学で工学を学んでいた21歳の息子のアジム・プレムジ氏(現在の会長兼CEO)が父親の事業を引き継いだ。

このときの事業価値はおよそ200万ドルで、事業は極めて複雑で不安定だった。そのため、初めての株主総会の議長を務めた際、株主はアジム氏にこう言い放ったという。

「若者よ、持っている株式を大人に売りなさい。WIPROのような複雑な会社を君が運営できるはずがない」

この言葉を聞いて、アジム氏は会社を持続可能かつ利益を生むものにしようと固く決心した。彼は、洗面道具、照明、ベビーケア商品などに多角化していく。

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