35歳以上のための"普段着婚活"のススメ
「キラキラな結婚」より「疲れない結婚」!

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高齢出産、そして老いる親……

斎藤夫妻の話に戻ろう。結婚したときは41歳で「とにかく早く子どもを産みたい」と焦っていた紀子さん。幸いなことに、結婚してすぐに自然妊娠をして、1年後には息子が健康に生まれてきた。

「姪っ子や甥っ子もかわいがってきましたが、自分の子どもはケタ違いにかわいいですね。大げさですけど、この世に生まれてきてよかったとしみじみ思えます。子育てしながら働くのは大変ですけど、幸せのほうがはるかに大きいです。独身の頃は子育てがこんなに楽しいとは想像できませんでした。もっと早くわかっていて、36歳ぐらいで結婚できていたら、2人目3人目の子どもができたかもしれないのに……」

子どもが生まれた喜びに浸りつつ、その子の「きょうだい」は産めない可能性が高いことを悔やむ紀子さん。ただし、「晩婚」だからこそ現在の生活に充足できることも知っている。

「この年齢だからこそ、夫婦げんかなども含めて結婚生活なのだと納得できるのだと思います。若い頃は無理だったでしょう。私はテニスも旅行もやりたいことはやり尽くしてから結婚したので、今はいろんなことを我慢できます。正直言って、37歳ぐらいになってテニスがあまり楽しく感じられなくなっていました。体を動かしているときは夢中になれるのですが、終わった後に寂しさや物足りなさがありましたね」

紀子さんのように「やりたいことをやり尽くしてから」の結婚でないと、子育て中もしくは子育て後に不満が爆発してしまいかねない。とはいえ、20代前半で結婚するのも難しい。新卒で入った会社に慣れて主体的に動けるようになり、経済的にもゆとりが出て、「やりたいことをやり尽くす」余裕が生まれるのは早くて就職5年目ぐらいからだ。そのため、30歳前後が現代の「結婚適齢期」となるのだが、このタイミングを逃して自由な独身生活を謳歌しているうちに30代後半に突入していたりする。僕たち「晩婚さん」が抱えるジレンマである。最後に、明弘さんがつぶやいた。

「オレも父親が40歳のときの息子なのです。サラリーマンをやってから14年前に家業を継ぎましたが、そのときはすでに親父は働き盛りを過ぎていました。父親が大工としての腕を振るっていたときに教えてもらいたかったなあと、思うことがありますね。息子が大人になるときはオレも年老いてしまっています」

80代の父親は、インタビュー中に下の工務店で斎藤夫妻の息子をあやしてくれていた。50代ぐらいの血気盛んな大工さんだったら、ここまで「孫煩悩」ではなかったかもしれない。新婚なのに老いと向き合わざるをえないのが晩婚さんの宿命であるが、その条件の中でいかに人生を堪能するかは、僕たちの心構えと創意工夫にかかっている。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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