アイドル界の「生きた化石」、ももクロの奇跡

ファンは老若男女、古くて新しい「汗と工夫」

そうしたこともあってか、ももクロのライブ会場には、それこそ老若男女が集います。白髪のご夫婦からお父さん・お母さんに手を引かれた幼稚園児、もちろん若い男性、そして女性のグループもたくさんいます。そして、もちろんファン個人個人にはそれぞれに推しているメンバーがいるのですが、その推しメンがほかのメンバーとの相関関係の中で魅力を発揮しているとわかっているので、誰もが例外なく「ももクロ」というチーム全体を推すことになるのです。

これは、グループという「闘技場」の中でライバルたちと闘うメンバーとそれを推すファンたち、という関係性を魅力の一つとするAKB48のメカニズムとはかなり異なるものです。

ももクロ、そのはかなさの美学

しかし、だからこその「弱点」がももクロにあるのも事実です。メンバーが入れ替えられないがゆえに、ももクロは変質から逃れられない、ということです。

いかに疑似恋愛から離れているとはいえ、ももクロは10代の少女たちの集団であり、そのキャラ性は本体である少女たちのリアルに縛り付けられています。ですから、彼女たちが20代、30代と成長していくにしたがって、ももクロは変質してしまいます。たとえば佐々木のソロナンバー「だってあーりんなんだもーん」は、あくまで14歳のおませな少女が大人の女性の魅力を戯画的に演じる楽曲ですが、その佐々木も現時点で18歳。今、同じことをやっても単なるお色気ソングになってしまいかねませんし、それが30歳になったら……まあ、それはやめておきましょう。確かに今のキャラ設定を小学生時代からずっと演じ続け(佐々木はももクロに加入する前からチャイドルとして活躍していました)、それゆえファンから「佐々木プロ」とも呼ばれる彼女であれば、20歳なり、30歳なりのキャラ作りをしてくれるとは思いますが、それはもはや14歳の少女が醸し出せる魅力とはまったく異なるものになるはずです。

ももクロは変質を受け止める!

ももクロは解散せず、将来に向かってこのメンバーの変質を受け止めて、チームとしても変質しながら活動を続ける、という方針がすでに表明されています。それに伴い、ももクロの活動にも明かな変化が見られます。最も顕著なのは楽曲の方向性で、2012年以降はそれまでキャラ設定とその関係性を楽曲に織り込んで魅力作りに貢献した音楽プロデューサー・ヒャダイン(前山田健一)と距離をとり、2013年のアルバム「5th Dimension」以降はキャラクター性から、よりアーティスティックな楽曲への傾斜を鮮明にしました。楽曲も広瀬香美や高見沢俊彦(THE ALFEE)、中島みゆきといったニューミュージックアーティストに依頼するケースが増え、イベントでのコラボ経験がある南こうせつやさだまさしが近く楽曲を提供するのでは?という観測も聞かれるほどです。それに伴い古参のファンの中には離れていった人もいますが、まぁ、それはアーティストの活動には当然、起こることです。

こうしたももクロの変化を見越したうえで、所属事務所のスターダストプロモーションは、それに対応し、「私立恵比寿中学」「チームしゃちほこ」などの妹グループを打ち出しています。これは「3B」と総称され、ハロープロジェクト的な展開を志向しているようにも見えます。筆者もその成功を祈願しています。

しかし、いずれにせよ、ももクロは変わっていくわけです。ももクロの魅力には、その変わりゆくという宿命、今この瞬間のグループであるというはかなさそのものが、すでに織り込まれている気がしてなりません。

そういう意味では、アイドル「ビジネス」の進化論という点から見れば、ももクロは極めて脆弱なモデルだといえます。けれども、モー娘。、AKB48の「経営的進化」が大きくアイドルそのもののあり方も変えてしまった2010年代に、ももいろクローバーZという古典的な存在が、その古典的王道プロデュースを愚直にやり遂げることで成功してみせたということは、何か大きな意義があるようにも思えます。

さて、次回なのですが、現代アイドルの「戦略」を語るうえで、今後、おそらく欠かせない事例になるだろうと目される、今、注目のBABYMETALについてご紹介したいと思います。

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