『モテキ』などの作品で知られる漫画家の久保ミツロウもモノノフと言われますが、その意向で『モテキ』映画版の劇中歌として、ももクロの「走れ」が使われています。こうした公私混同的(非難しているわけではなく、クリエーションというのはこういうものなのです)なももクロの起用で、ファンがさらに増えていく、という好循環がおきていたわけです(※初出時に事実誤認があったため、訂正させていただきました)。
これをあえてビジネスにたとえて言うと、話題性で一気に人気を得たモー娘。、そしてマーケティングの工夫で人気をつかんだAKB48に対して、販売店の人たちがほれ込んだことで人気が出たももクロ、と表現してもそれほど間違ってはいないのではないでしょうか。
ももクロ、その闘いのストーリー
こうした著名人を含めたモノノフたちが、ももクロを推す理由として決まって挙げるのは、「ももクロの頑張る姿」の魅力です。ただ、普通、アイドルグループが「頑張る」というと「歌とダンスが上手くなる」ということだと相場は決まっていますが、ももクロの頑張り方はほかの普通のアイドルグループとは一線を画しています。
デビュー前の路上ライブは当たり前。夏休みになれば1台のワゴン車で全国のヤマダ電機の前でのステージをこなす「全国ツアー」へ連れ回され、メジャーデビュー後も、ときに飯島勲(元小泉純一郎秘書)と政治論を語らせられたり、メタル系ロックフェスになぜか放り込まれたりします。それどころか、悪役プロレスラーとして顔ペイントでリングに送り込まれて毒霧を口から吹かされたり、「アイドル戦国時代」と言われれば、その「戦国時代」的な雰囲気を出すために甲冑姿でステージに現れたりします。ももクロの活動は「他流試合」が多く、音楽ジャンル、活動領域を超えて、さまざまな人たちと共演させられていきます。まぁ、一言で言えばアイドルグループとしては「あまりに変」なのです。
もちろん、本来のパフォーマンスもちゃんと強烈です。看板ソング「行くぜっ!怪盗少女」におけるリーダー・百田夏菜子の「海老反り」ジャンプは有名ですが、それだけではなく、ライブにおける彼女らの運動量も圧倒的です。歌唱も口パクがない(ごく初期にあったという情報もある)ことは有名で、かつてライブ途中に機材トラブルで伴奏が消える中、アカペラでライブを続行したという逸話もあります。
まだミドルティーンの女の子なのに、振り付けの中で、ビートたけしの「コマネチ」が入ってたってへっちゃらです(当初は泣いていたメンバーもいるのですが)。歌がうまいかどうかではなく、ファンのために演じることに真正面からぶつかる姿勢。それこそが「ももクロの頑張る姿」なのです。
元・沢尻エリカ担当、プロレスファンのマネージャー
ですから、ももクロは仕事を選びません。いえいえ、もちろんプロダクションのほうでは仕事を選んでいるわけなんですが、その仕掛け人と言えるのが、チーフマネージャーの川上アキラです。スターダストプロモーションで沢尻エリカのマネージャーをやっていた、アイドルに何の知識もないプロレスファンの彼が、突然、アイドルグループをプロデュースしろ、と言われたことから物語は始まっています。
そこから、アイドルとは何かを考える川上アキラの物語と、彼に選ばれ、アイドルを全力で演じていくももクロのメンバーたちの物語が始まります。紹介したいくつもの変な活動は、その中での試行錯誤の物語です。それが全力であるがゆえに、物語はつねに過激になります。
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