ももクロは、順風満帆だったわけでもありません。ブレークの実感があった2011年の初めには、サブリーダーでもあった早見あかりが、アイドルをやり続けることの限界と、女優を目指す気持ちとから、突然、脱退するという危機も体験します。しかし、それをも乗り越えて、ももクロは奮闘し続けます。川上アキラとももクロの強い信頼関係が、彼女たちの活動の礎にあります。
こうした物語が、ももクロのライブをはじめとした活動での、メンバーの表情や姿勢、立ち居振る舞いの端々にちゃんと現れます。それに気づくことで、ももクロに興味が湧き、続いてそのストーリーを知ることで、今度はももクロの物語の魅力がさらにわかってくる、ももクロはそんなコンテンツなのです。2012年の紅白歌合戦初出場のときのステージで、5人が歌う6人の名前入りの「行くぜっ!怪盗少女」に涙できることは、そんなモノノフの特権といってもいいかもしれません。
ももクロのキャラ設計とは?
先ほど筆者は、「アイドルを全力で演じていく」と言いました。そう、ももクロというアイドルグループは、メンバーに「演じられる」人工物です。
ももクロの設計は、キャラ設定を明確にし、テーマカラーを前面に押し出す、スーパー戦隊的「5人組」を基本としています。そういう意味では、当初6人組だったももクロが2011年に5人組に変わったことは、ポジティブに評価してよいかもしれません。
現在のももクロは、リーダーの百田夏菜子(赤。以下、カッコ内はテーマカラー)を中心に、「女性的魅力」担当の玉井詩織(黄)と佐々木彩夏(ピンク)、そして「人間的魅力」担当の有安杏果(緑)と高城れに(紫)という布陣で構成されます。さらに、百田には体力、元気、アホなどの属性があり、玉井には妹、美形、気合い、優等生など、佐々木には最年少、お色気、(体型が)ふっくら、しっかり者など、有安には背が低い、頑張り屋、歌やダンスの技能派など、そして高城にはボケ、変人、気が優しい、最年長などのキャラ設定がなされています。
このコラムの想定読者である40代以上のオジサン向けには、古のゴレンジャーになぞらえて、百田がアカレンジャー、玉井がアオレンジャー、佐々木がモモレンジャー、有安がミドレンジャー、高城がキレンジャーの役回りにだいたい該ると言えばわかりやすいかと思います(色の対応はズレていますが)。
いやいや、そんな設計論ならどのアイドルグループだってできるだろう、やってるだろう、という声も聞こえてきそうですが、なかなかこれを成功させられるグループはないのです。なにせ、これが成功するためには、何重もの相乗効果を実現しなくてはいけないからです。それは、そのキャラと本来の彼女たちのキャラクターとの相乗効果であり、その組み合わせによる相乗効果であり、さらにそれをももクロの活動や楽曲と組み合わせることによる相乗効果です。これをすべて成立させること、そしてこの相乗効果状態を維持していく確率は、極めて低いと言わざるをえません。
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