有料会員限定

日本企業は“早い選抜"に変われ [講義7 組織論]

✎ 1〜 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

教える人 東京大学教授 大湾秀雄

おおわん・ひでお●東京大学社会科学研究所教授。東京大学卒業後、野村総合研究所でエコノミスト。スタンフォード大学経営大学院博士課程修了。2010年から現職。(撮影:尾形文繁)

特集「経営学の教科書」の他の記事を読む

皆さんは日本企業の特徴として何を思い浮かべますか? 年功序列、終身雇用、新卒一括採用……。諸外国に比べて長い労働時間を挙げる人もいるかもしれません。それらの多くは、人事経済学によって理論的に説明できます。

組織を考えるうえで必要な概念が三つあります。人的資本理論、インセンティブ、そして関係的契約です。

人的資本理論とは、機械への投資と同じように、人間は投資によって技能や知識を高めることができるという考え方です。人的資本には2種類あります。どの企業でも通用する技能や知識などの「一般的人的資本」と、特定の企業でのみ価値を生み出す「企業特殊的人的資本」です。

業務が標準化され集権的な企業ほど一般的人的資本の割合が高く、業務が特殊で分権的であるほど企業特殊的人的資本が高くなります。では、どちらのほうが離職率が高くなるでしょうか? そうです。一般的人的資本の割合が高い企業です。

人的資本への投資費用(教育のコスト)を誰が負担するかを考えてみてください。一般的人的資本で求められるのは標準的スキルですから、従業員自らが投資するケースが多い。一方で企業特殊的人的資本では、企業も費用を折半します。従業員が身に付けた技能は他社では通用しにくく、企業も従業員に辞められると、投資を回収できなくなる。

関連記事
トピックボードAD