教える人 東京工業大学教授 井上光太郎
日本企業も含め世界では、国境を越えた企業の合併・買収(クロスボーダーのM&A)が増えています。ただ、日本企業によるクロスボーダーのM&A(2003~10年の期間)は、買収後2年間の株価や業績で見ると、企業価値が向上したかどうかはせいぜい五分五分。あまり芳しくない結果です。
企業がM&Aを行う主要な動機は、事業における効率性の改善です。前提となるのは「企業はどこまでを自社で行う事業の範囲とするか」という概念です。ロナルド・コース(1991年のノーベル経済学賞受賞者)が37年の論文「企業の本質」で、「企業は自社の取引コストを最小化するように自社の事業範囲を決定する」と指摘しました。M&Aも、この事業範囲を決める要素となります。
取引コストを最小化するにはM&Aで事業規模を大きくすればいい、という単純な話ではありません。売却によって不必要な部分を外部化したほうがいいときもあります。
自動車産業や電機産業などは、伝統的には川上の部品会社や川下のリース会社をM&Aも活用し垂直統合してきました。川上・川下への支配を強め、自分たちメーカーのニーズに対応してもらうことで取引コストの低減につなげました。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら