教える人 サイエンス作家 竹内 薫
数字がよく使われるのは、自然科学や経済、金融などの分野。数字は出来事を客観的に表せるからだ。感情を排して、科学的な根拠を持たせることができる。

たけうち・かおる●1960年東京生まれ。東京大学理学部物理学科、カナダ・マギル大学大学院博士課程修了。近著に『素数はなぜ人を惹きつけるのか』(朝日新書)など。
だが一方で、使い方を間違えると数字は独り歩きを始める。数字の知識がある人が、数字を使って人をだますことも可能だ。数字の読解力を高め、人にだまされることなく状況を冷静に判断できる力が、ビジネス上も極めて重要になる。
数字にだまされやすいポイントはいくつかある。まず、グラフなどの図表を見て、思わず感情が先走ってしまう場合だ(図表1(1))。グラフの目盛りを変えれば、急成長しているようにも、伸び悩んでいるようにも見せられる。グラフの形を見た瞬間、「急成長している!」と思い込むと、作り手の意図にまんまとはまる。いったん冷静になって「さて、目盛りはどうなっているかな」と、基となる数字に回帰してほしい。
[図表1]

実態に即していない「平均値」に要注意
データの分布にも気をつけたい(図表1(2))。特に「平均値」には注意しよう。「ちょうど真ん中の数値」と思ってしまいがちだが、データの分布によっては、平均値にあまり意味がない場合も多い。
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