教える人 慶応義塾大学 教授 磯辺剛彦
「誌上ビジネススクール」を開講するに当たって、まず競争戦略の講義から始めましょう。
今、世の中には「戦略」という言葉があふれています。事業戦略、IT戦略……アベノミクスの「成長戦略」もあります。内容としては「構造改革」のほうが合致していますが、戦略といったほうが「やります感」が出るのでしょう。
日本で経営戦略という言葉が急速に増えだしたのは、1997年ごろだと思います。山一証券が倒産するなど、金融危機が深刻化した時期です。このように経済危機が訪れたり、景気が悪化したりすると、戦略論が取りざたされます。
実際に経済環境が悪いときほど、戦略の効果が高まります。日本のどの産業を分析しても、業界平均の利益率が高いときより低いときのほうが、企業間の利益率の格差が大きくなります。そしてその格差は年々拡大している。現在のように経済の成熟化が進むと、戦略の優劣がそのまま企業業績に表れます。
2008年に発表された論文では、世界の大企業500社のうち、約9割が過去に業績の低迷を経験しており、その理由の7割が戦略要因でした。もっと細かく観察すると、環境が変化しているのに、過去に成功した戦略を踏襲したことで失敗を引き起こした、「成功のわな」が最大の要因でした。
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