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なぜ悪い戦略が蔓延するのか 1.世界の経営学の新常識 [講義1 競争戦略]

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教える人 慶応義塾大学 教授 磯辺剛彦

いそべ・たけひこ●慶応義塾大学大学院経営管理研究科教授。1981年慶大卒、96年同大で経営学博士。流通科学大学、神戸大学教授を経て2007年から現職。(撮影:今井康一)

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「誌上ビジネススクール」を開講するに当たって、まず競争戦略の講義から始めましょう。

今、世の中には「戦略」という言葉があふれています。事業戦略、IT戦略……アベノミクスの「成長戦略」もあります。内容としては「構造改革」のほうが合致していますが、戦略といったほうが「やります感」が出るのでしょう。

日本で経営戦略という言葉が急速に増えだしたのは、1997年ごろだと思います。山一証券が倒産するなど、金融危機が深刻化した時期です。このように経済危機が訪れたり、景気が悪化したりすると、戦略論が取りざたされます。

実際に経済環境が悪いときほど、戦略の効果が高まります。日本のどの産業を分析しても、業界平均の利益率が高いときより低いときのほうが、企業間の利益率の格差が大きくなります。そしてその格差は年々拡大している。現在のように経済の成熟化が進むと、戦略の優劣がそのまま企業業績に表れます。

2008年に発表された論文では、世界の大企業500社のうち、約9割が過去に業績の低迷を経験しており、その理由の7割が戦略要因でした。もっと細かく観察すると、環境が変化しているのに、過去に成功した戦略を踏襲したことで失敗を引き起こした、「成功のわな」が最大の要因でした。

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