ただ、大事なのはここからだ。第2次大戦は65年前に終わったが、戦前の日本では理系が圧倒的なエリートであり、収入も高かった。うろ覚えの数字だが、いちばん高いのは東大を筆頭とする帝大系の理系で初任給は65~70円。帝大文系で55円くらい。早慶クラスの私大理系は55円くらい、文系45円くらい。一般私大の文系は30~35円だから帝大理系の半分だ。
ただし、戦前は大学が極端に少なく、大卒というだけで超エリート。エリートの中でこれほど大きな格差があった。理系が優遇されたのは、国力を発展させるために技術が必要だったからだ。
文理の格差がなくなったのは、戦後の米軍占領時代。理系エリート層への優遇を排除する方針が採られた。もしかすると、日本が再び国力を取り戻すことがないようにするための措置だったかもしれない。労働運動も盛んで平等な賃金を要求した。そして大学は各県に国立大学が作られ、私大も増えて今日の姿になっている。
京都大の調査では「理系は文系より年収が100万円高い」
本書の紹介から離れるが、理系と文系の収入に関しての新しい調査が発表されている。京都大や同志社大などのグループが大卒の人たち約1600人を調査したところ、理系出身は文系出身より高収入という結果になったのだ。これは「理系白書」によって確立していた「理系は出世も遅く給与も低い」という定説を覆すものだ。
今回の調査によれば、年代別でも大学の難易度別でも理系出身の収入が上回ったという。調査対象は、20~60代の1632人(平均年齢43歳)。文系出身988人の平均年収は583万円だったのに対し、理系出身644人は681万円だった。
年代別に推計すると、すべての年代で理系のほうが高く、出身学部をベネッセコーポレーションによる大学難易度別にA(偏差値60以上)、B(50~59)、C(50未満)に分けたところ、同じ難易度ではいずれも理系が高く、最も高いのはAの理系だった。Bの理系はAの文系の平均を下回ったものの、Aの文系でも受験で数学を選択しなかった人(文系中の文系)の平均よりは高かった。