文理の比較では、収入以外の「満足度」についての調査もあり、文系よりも理系がかなり高い。人や組織を相手にする文系職種はストレスが強いのに対し、理系は自分が好きな領域で仕事をする人が多いからだろう。
2003年に警鐘が鳴らされていた「若者の理系離れ」
「第3章 博士ってなに?」では「ポスドク」について書かれている。ポスドクとは「ポスト・ドクトラル・フェロー」の略。日本では「科学技術基本計画」によってポスドクを1万人にまで増やそうと計画し、実行されているが、多数のポスドクの安定した就職先が少なく問題になっている。いまも大きな問題だが、03年段階でもすでに問題になっていた。7年経った10年の現在でも解決しそうにない。
「第4章 教育の現場から」では、若者の理系離れと学力低下について書かれている。この数年に若者の「理系離れ」「電気・電子離れ」が大問題として論じられているが、7年前に意識されていたわけだ。高度人材であるポスドクは身分が不安定なまま、30代、40代になっているのに、高校生、大学生の学力は低下している。ひどいアンバランスだ。
そもそも高校生が理系に進みたがらない。何となく「理系は損だ」と思っている。また現在の理系学科では修士に行くのが普通になっているので在学6年。「学部の4年間では社会に出せるレベルにならない。マスターの2年が必要だ」という理系教官もいる。ところが高校生や親は「同じ6年なら医学部のほうがいい」ということになるわけだ。
理系大学生の間でも、電気・電子・情報・材料という分野は嫌われている。また就職に際しても非製造業(商社、コンサル企業、金融)に進む学生が増えており、名門大学ほどその傾向が強まっている。理系人材は縮小し続けている。
この他にも「理系カルチャー」「女性研究者」「失敗に学ぶ」「変革を迫られる研究機関」「研究とカネ」「独創の方程式」「文理融合」など豊富なテーマが取り上げられている。理系人材と付き合う機会の多い人事担当者には貴重な情報だ。
(HRプロ嘱託研究員:佃光博=東洋経済HRオンライン)
講談社文庫 600円
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら