あなたは、なぜいつも優柔不断なのか? 「意思決定」に隠れた2つの原理

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──どうしても直感が混じる場合もありませんか。

たとえば就職の内定を5社からもらったとする。それぞれ給与額、勤務地、キャリアの見通しその他、いろいろと評価基準がある。どう選ぶか。最初に重要なのは勤務地だとして、第1希望を満たす2社に絞る。これでは決まらない。次に重要なのは給与だと、最も高いA社を選ぶ。この選び方はもっともらしい。評価基準の重要性にきちんと順番をつけている。論理性がある。順々に絞っている。直感的だが、この選択方法以外にないと思いがちだ。

注意喚起しておきたいのは、実際にはこの方法はかなりリスキーだということだ。勤務地が重要だという最初の基準は本当に絶対条件だったのか。それでほかの三つの選択肢をスパッと切っている。効率的ながら、この部分だけに着目して切り捨ててよかったのかどうか。

車選びはリアルな意思決定

──車選びについて多くのページを割いています。

適度に複雑で、基本的に難しいが、決断の問題ではない。買い物のうち金額的にも比較的重要な意思決定なので、事例の中心にした。何百万台もある中古車の中からどう絞り込むかという視点で、3台にまで行き着いた。マニアや業界の人から見ると大ざっぱな選び方かもしれないが、意思決定の問題としてリアリティはあると思っている。

──最近は、手軽なインターネットを活用しがちです。

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使い方を誤ると、落ちなくてもいいわなにわざわざ落ちる。今は、すぐにインターネットで検索する。特にソーシャルメディアには気をつけたい。車選びで楽なのは、最初から数タイプだけをピックアップすることだ。それでネットの口コミ情報を見る。まず一つ見て影響される。また別の情報では、違う見方でいい車を説明している。また影響される。

そうなると、ネット上のどの意見が正しいのかという、もう一つの意思決定問題を抱えてしまう。車を選ぶはずなのに、どの人の発言に信憑性があるのか判断するという余計なタスクを背負い込み、かえって混乱する。答えではなく、選び方の情報収集に徹すべき。選ぶ基準が大事で、答えは自分が出すものだ。

──優柔不断にならないためにはどうすべきですか。

選択肢は誰でも求められる。難しいのは評価基準だ。時間軸の問題が絡むと、たとえば最適な伴侶選びというような問題は、意思決定というより決断の問題に近くなる。重要なのはどれだけ不確実性を意識して取り組めるかだ。秘訣は、意思決定の概念をはっきり把握してどの原理がふさわしいかをしっかり判断できることだ。つまり、どう意思決定するかを意思決定できることがまず大事なのだ。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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