工作で誰もが使う「ヤマト糊」の圧倒的強さの秘密 家訓「一代一起業」が生んだイノベーション

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まず、インダストリー事業部は、自動車産業向けでは、加工製造販売を行っているが、その他の産業向けには主には商社的機能で、各産業から相談、依頼を受けて商品を探してきたり、素材・材料メーカーに製造を委託し、完成した製品を依頼元に販売したりしている。

たとえば主に海外に4つある拠点から自動車産業向けに加工販売しているのは、自動車の製造工程で使われる型テープなどだ。ざっと種類を挙げれば、自動車パーツの塗装時に使用されるマスキングテープ(色をつけたくない部分に貼る)、ドアサッシに貼るブラックアウトテープ、パーツとパーツの間に貼る緩衝材、自動車のプラスチック内装材などに貼り付ける加飾用のシール、納車までタイヤのホイールなどに貼り付けておく保護フィルムなどが型テープに当たる。

水に溶けるテープ

また、製紙産業に対しては、ロール紙に使われる水溶性テープなどを販売している。昔ながらの「ちり紙交換」に代表されるように、製紙業界は、古くからリサイクルの仕組みが確立している業界だ。

企業や家庭から排出される古紙は業者によって回収され、製紙会社に運び込まれる。その古紙と新しいパルプから製紙会社は巨大なロール紙を作り、それがさまざまに加工されてパッケージや書籍などの商品となる。そして、その商品を消費した個人や企業が古紙を排出し、また回収、製紙、消費……というサイクルだ。

製紙会社が作るロール紙には「くっつける」必要のある箇所が3つある。紙の端を芯に貼り付けて巻き始める箇所、紙と紙をつなぐ箇所、そして巻き終わりに固定する箇所だ。ヤマトは、この3箇所に使う水溶性テープを販売しているというわけだ。

なぜ水溶性かというと、すでに述べたとおり製紙はリサイクル前提だからだ。古紙はまず熱湯でどろどろに溶かされる。通常のテープでは、この工程で接着剤のネバネバが残ってしまい、製紙工程の大きな妨げになるのだ。

「水に溶けるテープ」が求められるのは製紙業界に特有なことだ。かつてはヤマトの同業他社にも水溶性テープを扱う企業があったが、デジタル化に伴う紙の需要低下を見込んで撤退してしまった企業もあるなかで、古くから水溶性テープを扱ってきた経験から培われた専門知識は、業界内でたいへん重宝されているという。

ではエレクトロニクス産業はどうか。実はテープの需要が多い産業であるという。

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