プーチン体制をきしませるロシア内の2つの勢力 新興財閥と軍治安機関への締め付け強めるプーチン

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最近有名になったのは、銀行・建設業グループを率いるロテンベルク兄弟だ。元々はプーチン氏の柔道仲間だ。2021年1月、ロシアの反体制派のナワリヌイ氏の調査チームは、大統領がロシア南部の黒海沿岸に推定1000億ルーブル(約1400億円)相当の豪華な「宮殿」を所有していると批判する動画を公開した。大統領側は所有を否定しているが、この際に建設資金を工面したのが同兄弟と言われた。さらに同兄弟はロシアが2014年に併合したクリミアでの橋建設にも協力するなど、政権と完全に一体化している。

もう1人、今回の侵攻に絡んで存在がクローズアップされた「お友達オリガルヒ」が、国営軍事企業ロステックを率いるチェメゾフ氏だ。ロシア軍は2022年3月18日に部隊配備されたばかりの極超音速ミサイル「キンジャル」を初めて攻撃で使用した。キンジャルを製造したのがこのロステックだ。チェメゾフ氏は、旧東ドイツでプーチン氏と同じアパートに住んでいたスパイ仲間だ。

プーチン政権の特徴は、このような「お友達オリガルヒ」たちとがっちり築いた「個人専制主義体制」だ。投獄されたナワリヌイ氏率いるグループは、こうしたオリガルヒを含めプーチン氏に近い35人を制裁の対象とするようアメリカ政府に提言したが、2021年6月のジュネーブでの米ロ首脳会談前にバイデン氏が却下した経緯がある。

政商集団への制裁は打撃となるか

しかし侵攻後、一転して、35人すべてが制裁の対象になった。今後制裁がじわじわとオリガルヒたちのビジネスに打撃を与えることになるのは必至だ。近年、プーチン政権が欧米との対立を深める中、グローバル経済に組み込まれたオリガルヒたちがビジネスへの悪影響を懸念してクレムリンから離反するのでは、との観測は出ていた。これからもオリガルヒから離反者を出さないことがプーチン体制の命運を握ることになりそうだ。

逆に言えば、バイデン政権にとっては両者を離反させることがプーチン氏の権力掌握を弱めるうえで重要になってくる。バイデン政権発足当初、ホワイトハウスの国家安全保障会議で対ロシア政策を担当したケンドール・タイラー氏らは、アメリカがプーチン政権の壮大な腐敗構造の実態をロシア国民に直接伝えるべきと主張している。

一方、プーチン政権のもう一つの権力基盤である治安機関で、オリガルヒよりも一層明白に動揺が表面化している。ロシア有力紙コメルサントは2022年3月17日、治安維持や国家施設の警備などを担当する国家親衛隊(NGR)のガブリロフ副隊長が辞表を提出したと報じた。副隊長が逮捕されたとの未確認情報も流れている。理由は明確でないが、侵攻作戦の当初の失敗で責任を取らされた可能性がある。

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