「不妊に悩む人多い」日本社会が見過ごす根本原因 知っているようで知らない「妊娠適齢期」の真実

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また、年齢は妊娠する際に大きな影響を及ぼすだけでなく、妊娠後もいろいろな影響があります。ここでは流産と周産期死亡率(分娩の時期に赤ちゃんが死亡する確率)、胎児の染色体異常についてお話ししましょう。

まず流産ですが、次のグラフを見てください。

これは2009年、2014年、2019年に生殖補助医療を行い妊娠した人の流産率です。この値はほぼ自然妊娠の場合と変わりません。20代が最も低く10%台の後半です。この値は年齢が高くなるとともに上昇して、40歳では総妊娠の約3分の1が流産します。

周産期死亡率(妊娠満22週以後の死産+生後1週未満の早期新生児死亡を出生数+妊娠満22週以後の死産数で割った値)についても、年齢によって変動があります。2007年から2011年の多くの症例をまとめたデータでみると、20代の周産期死亡率は分娩1000当たり4.0前後ですが、年齢が高くなるにつれてこの値は上昇し、40代では7.0以上になっています。

出生児への染色体異常率にも影響

さらに出生児の染色体異常率にも影響があります。人は46本の染色体を持っていますが、この数が、1~2本多い場合や少ない場合があり、これを染色体異常と呼んでいます。この率も若いほど低く、高齢になるほど上昇します。

ダウン症、すなわち21番染色体が1本多く、全部で47本の染色体を持つ子の発生率を見ると、母親が20歳だと1667人に1人、30歳だと992人に1人、母親が40歳だと106人に1人、45歳だと30人に1人となっています。年齢が高くなるほど、急速にダウン症児の出生リスクが上昇するのです。また、21番に限らず、何らかの染色体数が異常である確率についても年齢とともに急上昇します。

このように女性においては年齢とともに妊孕力が低下し、妊娠中や分娩時のリスクが上昇し、また出生児へ影響が及ぶことが知られていますが、男性も同様に年令とともに妊孕力が低下し、出生児に影響が及ぶ可能性が上昇します。

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