例えば、40歳を超えると男性の精液の所見の内で、精子の質に関わる精子頭部にある遺伝子の断片化(精子のDNAに損傷がある)が顕著に進みます。このために不妊になったり、妊娠しても流産になったりすることが多いといわれています。
また、これとは別の現象ですが、精子の遺伝子のポイントミューテーションといって、遺伝子の1塩基が変異する突然変異が年齢とともに増えるといわれています。精子の元の細胞では、1歳年を取ると約2つの突然変異が増えるといわれています(出所:Curr Opin Obstet Gynecol 2013; 25 :181-3)ので、20歳の人が40歳になると40個どこかの遺伝子に突然変異が起こっていることになります。
このため、高齢の父親から生まれた子どもでは、自閉症、多動性障害、鬱、統合失調症などの精神疾患を持つ可能性が高まるという調査結果もあります(出所:Am J Psychiatry 2013; 170: 599-608)。
このように、男性においても高齢化に伴う影響は避けられず、これらのことを考慮すると、男女とも医学的な妊娠適齢期は20代であるといえます。
20代では約55%の人がタイミング療法で妊娠
次のグラフをみてください。これは、私が現在勤めている梅が丘産婦人科において2019年と2020年に不妊治療をして妊娠に至った人が、どのような治療法で妊娠したのかを検討したものです。
私どもの施設では、不妊初期検査後、妊娠が可能な最小限の治療から開始しています。そうすると、全妊娠の約3分の1がタイミング療法で妊娠しています。しかも、年齢別に分けると若い人ほどタイミング療法で妊娠する人の割合が高く、20代では実に約55%の人が妊娠していました。
30代前半の人でも約40%の人がタイミング療法で妊娠していることから、自分たちで努力しても妊娠しなかった場合、若いうちに不妊クリニック受診していただければ、より軽い治療法で妊娠できますので、早めに受診されることをおすすめします。
しかし、現在は若い時期に妊娠・出産している人が少なくなっています。この原因としては、妊娠適齢期を知らないこと、また出会いが少ないこと、若年雇用の不安定さ、仕事と子育ての両立の困難さ、核家族化に伴う子育て負担の増大、子育て・教育費の負担や住宅の物理的制約などがあげられます。
少子化に歯止めをかけるには、不妊治療の保険適用だけでなく、そもそも社会状況として、どんな時期(例えば入社後すぐなど)に産んでも子育てがしやすい制度が構築されていることが重要なのではないでしょうか。
(4日目第3回は「生理痛が重い」を放置する女子に潜む不妊リスク)
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