大切なのは起床してからの生活様式で、なるべく陰嚢温度を下げることができる生活様式に変えることです。例えば、運転する代わりに歩いていけるところにはなるべく歩いていくというのも1つの方法だと思います。
仕事においては、仕事の途中に休憩を入れ、立って軽い運動を数分間したりしてみるのもよいかもしれません。肥満の人は健康な人に比べると、ほぼすべての生活活動で温度が高く、運動などの活動による温度変化は健康な人に比較して少なめでした。このことから、陰嚢表面温度の点からも、肥満の人は、男性不妊になりやすい傾向があると言えます。
また、生活習慣として、男性の皆さんの中で、PCをひざの上において仕事をしている人はいませんか。実はPCをひざの上において仕事したときの仕事時間と陰嚢表面温度を調べた研究があります。
座り始めて30分ぐらいはPCをひざにおいて仕事をしても、しなくても陰嚢表面温度は徐々に上がっていきます。それ以降はPCをひざの上に置かず仕事をしていない人だと温度はほぼ一定になるのですが、PCをひざの上に置いて仕事をする人では温度は上昇し続けます。
ですので、習慣としてひざの上でPCを用いて長時間仕事をする癖のある人では、もしかすると陰嚢表面温度が上昇し、精液所見に影響を与えているかもしれません。
妊活中はサウナや長風呂を一時中止するといい
サウナはどうでしょうか。リラックスできるので、かなり利用されている人も多いと思います。全身の体温も上昇するので、陰嚢表面温度も当然上昇します。サウナが造精機能に及ぼす影響について研究した論文があるのでご紹介します。
この研究では、健康な10人の男性にフィンランド式サウナ(80~90度、湿度20~30%のサウナに15分間、週に2回、3カ月間)に入ってもらい、サウナ開始前とサウナに3カ月入った直後、終了から3カ月後、6カ月後の4回の精子の状態を検査しています。
サウナ開始前と比較すると3カ月間サウナに入った直後の精子濃度と総精子数は有意に低下しています。また、サウナ終了後から3カ月経った時点では精子濃度、総精子数は回復傾向を示し、サウナ終了6カ月後では、ほぼサウナ前の状態に回復しています。
この研究では精子の数ばかりでなく、精子の質についても検討しています。サウナ開始前と比べて、サウナ直後では、精子の質にかかわる因子である精子染色質の凝縮やミトコンドリアの機能も影響を受けていることが証明されており、サウナ終了後3カ月、6カ月後には回復していました。
これらの結果からすると、サウナを利用していても妊活して妊娠している人は多くいると思いますが、もし、妊活中なのになかなか妊娠できないときは、サウナや長風呂の習慣を一時中止してみるといいかもしれません。
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