この研究では、7人の正常精液所見の男性7人に禁欲期間を1、2、5、7、9日間で精液を採取してもらい、精液の状態を検査しました。検査項目としては、精液量、精子濃度、総精子数、運動精子率、生存精子率、精子DNA断片化率(精子のDNAに損傷がある比率)などを検査しています。
以下は禁欲期間と精液量などの関係のグラフです。
禁欲期間が長くなると精液量は増加し(図A)、精子濃度も上昇(図B)し、総精子数も増加しています(図C)。一方で、禁欲期間が長くなると精子運動率は低下(図D)し、生存精子率も低下(図E)、精子のDNA断片化率が上昇します。
つまり、禁欲期間が長くなると確かに精液量は増え、精子濃度や総精子数も上昇するのですが、精子の運動率や生存率が低下し、DNA断片化率が上昇することより、長期の禁欲期間は精子の質は低下させると考えられます。妊娠は究極的には、正常精子1個が卵子1個と受精すればよいのですから、精子の質は妊娠するために重要な因子となります。
妊娠率は、禁欲日数が少ない人が高い傾向
禁欲期間と妊娠率の関連性についての研究も見てみましょう。妊娠を希望して不妊センターを受診し、人工授精を行った372カップル、866治療月経周期について調べたもので、人工授精を受ける周期には自然のタイミングは取らないで、禁欲期間と妊娠率の関係について検討しています。
禁欲日数が増えるにつれて、人工授精用に調整前の精子数、調整後の精子数は増える傾向にありますが、妊娠率は、禁欲日数が少ない人が高い傾向を示しました。これらのことより、禁欲日数が少ないと精子数は減るものの、精子の質が高まり、妊娠率も高くなったものと推測できます。
日本人は、一般的に妊活中でも性交回数が少ないといわれているので、不妊治療でタイミングを図り、排卵日のみにタイミングを取っておられる人が多いと思われます。しかし、タイミング法を取るときでも、事前に何回か性交の機会を持つか、またはマスターベーションにより、精子をフレッシュにしておくことは、妊娠の可能性に寄与するものと思われます。
妊活中は、不妊クリニックでのタイミング法や人工授精、体外受精にのみ頼るのではなく、自分たちができる工夫をし、男性は積極的に自らの精子の質を高めるよう、心がけることも重要といえるでしょう。
(3日目第3回は川崎希・アレク「いつか子どもに受精卵の写真を」)
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