次に、下着と陰嚢表面温度について検討した研究についてお話しします。この研究では、ゆるい下着をつけた状態、きつい下着をつけた状態、下着をつけない状態の3つの状態で、歩行したときと座っているときの陰嚢表面温度について測定しています。
座っているときは、ゆるい下着、きつい下着、下着をつけない、の3つの状態とも、時間が経つにつれて陰嚢表面温度は上昇し、30分ぐらい経過すると温度はほぼ同じ温度になり一定になります。なお座った直後は、下着をつけていない場合、下着をつけた状態に比べて0.5度ぐらい低い値です。またゆるい下着ときつい下着との比較では、ゆるい下着は経過時間にかかわらず、ほんの少し低温でした。
立って歩行中の場合は、座っているときと比較し3条件とも低温値を示し、低いほうから下着をつけない、ゆるい下着、きつい下着の順番でした。このことからも、長く座っていることをなるべく避け、歩く動作を入れることと、きつい下着よりはゆるい下着を選択することが考慮されるべきと思われます。
ゆるい下着をつけたほうが精子濃度が高い
また、ゆるい下着ときつい下着を使用した際の精子濃度、総精子数、総運動精子数を比較した研究した報告もあります。その研究ではゆるい下着をつけたほうが精子濃度は高く、総精子数、総運動精子数も多いと報告しています。これらのことより、妊活してもなかなか妊娠に至らない人では、下着はゆるい下着をつけ、陰嚢表面温度をさげ、精子の所見をよりよくすることも1つの方法と思われます。
もちろん、このような習慣をしている人すべてが不妊となっているわけではありませんが、生活習慣として長年行ってきたことが、造精機能に影響する可能性もあることは頭に入れておいてください。妊活してもなかなか妊娠にたどり着けない夫婦の場合には、生活習慣を見直すことも考慮されるとよいと思います。
最後は禁欲期間についてです。不妊治療をされている皆さんの中には、タイミングや人工授精、体外受精の際に、その日のために「精子を貯めています」と言われる人が多くいます。本当に、これが正しいでしょうか。
日本人は性交回数が非常に少ない国民ですが、禁欲期間が長いと、精液所見に及ぼす可能性がありますので、この影響について研究した論文をご紹介しましょう。
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