東大教授「入試以外の方法でも学生を集めるべき」 オンライン授業がもたらす「大学激変」の可能性
この流れをさらに進めるためにも、産学連携はもっと進めていくべきでしょう。今までは、ビジネスにつながるような研究は、企業の研究所がやっていて、大学と産業界は切り離されていました。しかし、良いアイデアを実用化していくためには、アカデミズムと産業界のインタラクションは必須です。
そもそも、大学に若い人だけがいるとか、高校を出た人がダイレクトに入学してきて、誰も社会経験がないという状態は、異常なことで、大学としてもったいないと私は思っています。
もっといろんな年齢層の人がいて、会社で働いたり、子育てをしたりしてきた人が、それぞれの経験を通して、学問への意見を語るほうがいい。
経営学や経済学などの社会科学は特にそうです。若者だけだと、社会に出たことのない学生が、見たことも経験したこともないものについて、あれこれ語り合っているだけになります。
そこに、経験者が「ビジネスをするとこうなる」と語ってくれる状態があれば、ずっと議論はリッチになるでしょう。
研究についてもそうです。純粋にその学問や研究を突き詰めてきた人ももちろん必要ですが、そこに、その技術を企業で売っていた人などが入ることで、違った見方ができるようになり、研究にもプラスになります。
産学連携の良さは、単にビジネスの話だけでなく、より多面的な研究ができるようになり、研究や教育の質も上がるというところにあるのです。
オンライン授業の成績で「大学に呼ぶ人」を決める
『GAFA next stage』では、大学は富裕層の子どもばかりだということが指摘されていますが、格差の問題に対する対応はすごく大事だと思っています。
いま、大学は、お金持ちの子どもでなければ、いいところに受からなくなっているのが現実です。かなりのお金をかけて受験勉強した人が勝ち残りますし、地方にいると、都市部の大学に出ていくこと自体にお金がかかり、教育機会の格差が開いてしまうというのが課題です。
やはり、入試に過度に負担がかかり、お金もかかっています。ですから私は、まず、選考なしで誰でもオンライン授業を聞いてもらい、そこで良い成績を修めることができたら、奨学金を給付してでもキャンパスに呼ぶ、ということをやってもいいのではないかと思っています。オンラインなら、地方のどこにいても平等ですからね。
日本は、コロナによって、それまでの文化ではありえないほどの変化を起こし、オンラインが急速に入ってきました。やろうと思えばオンラインもできるという実感を得られたこと、この経験を獲得できたことは大きいと思います。これをいい糧として、教育も、オンラインを有意義な形で活用できるといいなと思います。
今のテクノロジーでは、オンラインでのディスカッションには限界があります。ただ、オンラインには、キャパの制約を受けないというメリットがあります。今後は、オンラインとリアル、それぞれの特性を生かすということになるでしょう。
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