マキタスポーツ「20代の挫折」経て気づいた才能 器用さを褒められても素直に受け止められず

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ベタでわかりやすくて、もう誰でもゲラゲラ笑えるような笑いはすごい好きだし、やってる人たちもすごく尊敬してます。でも自分がやるなら、爆笑が起こらなくても「おお! そういう考え方もあるんだ」って思ってもらいたいですね。

「歌うまい歌」は、自分への壮大なツッコミ!

──今回、島津亜矢さんとコラボした「歌うまい歌」は、マキタさんの歌がうまいと言うメッセージを執拗に伝える歌なんですよね(笑)。 狙いはありますか?

マキタ:この曲では「僕は歌がうまいんだよ」ってことを、最初から最後まで朗々と歌ってます。「ツバサ」「トビラ」「サクラ」「キセキ」とか、「手をつなごう」「君に寄り添う」とかJPOP的な有り体の言葉ってあるけど、そういう歌もなんだか「歌がうまい」と歌ってるようにしか聞こえないときがあるんですよね。歌がうまい人って歌謡界にも山ほどいて、ともすればうますぎて風景のように見えてしまうこともあると思っていて。つまり、「歌がうまい」しか歌わないというのは、最大の皮肉なんです。

「お茶ボトルの成分表を泣きながら言ってください」って演技メソッドがあるとしたら、それと似たようなもので、最初から最後まで「歌がうまい」って歌詞をどれだけ心を込めて歌えるか。心が込めて歌えば歌うほどと、それが面白く見えてくるっていう現象になれば成功ですね。

──自分への壮大なツッコミなんですね!

マキタ:そうですね。単なるネタじゃなくて、これを歌ってもう1回自分の心の込め方をやり直せっていう点検の意味もあります。僕はライブでマジな歌も歌うし、面白いオトネタもやりますが、たまに「ずっと家にいたいのに、何でこんなことしなくちゃいけないの」とか思うときがあるんです。

もともと自分で面白いことやりたいって出てきた人間なのに、そんな気分に陥ってしまう。でも何かしら理由をつけて出てくときに、どんなモチベーションで人前に立てばいいのか疑問に思うんです。「心を込める」って形が先か中身が先かわからないけど、ネタや歌の形に心を入れていくと、自然と気持ちが一致する瞬間もあって、そういう仕掛けを狙ってます。

──島津亜矢さんとコラボレーションしてどうでしたか?

マキタ:今回、亜矢さんとコラボするにあたって、リアレンジして、後半にハモリを作ったんです。亜矢さんときれいにハモって、どうだ!ってやりたくて。でも、彼女と僕は実力が違いすぎました。子どもの頃から、歌うことを使命と思ってやってきてる人ですから当たり前なんですが。下北沢あたりで演劇論を交わしてる劇団員と超人気の歌舞伎役者ぐらい違いましたね。

──なるほど(笑)。どういうふうに聞いてもらいたいですか?

マキタ:笑ってもらえたらうれしいですね。あとは歌に心得ありという人に、ぜひカラオケでデュエットしてほしい。うまい人が「何とかしてやろう」っていう部分をご用意してます!

● マキタスポーツ
1970年山梨県生まれ。芸人、ミュージシャン、文筆家、俳優。音楽と笑いを融合させた「オトネタ」を提唱し、全国各地でライブ活動を行う。独自の視点でのコラム・評論などの執筆活動も多く、著作に「越境芸人」「一億総ツッコミ時代」「すべてのJ-POPはパクリである」など。2012年公開の映画「苦役列車」で第55回ブルーリボン賞新人賞、第22回東スポ映画大賞新人賞を受賞。「おんな城主 直虎」「忍びの国」など出演作多数。
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