なだ万、「アサヒビールへ身売り」の謎 創業184年の老舗、「安定」が狙いというが…

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なだ万側の11月14日付発表資料には、「事業基盤をより安定させ、なだ万ブランドの諸事業を一層信頼あるものとして発展させることが出来る」と、アサヒビールの傘下に入ることについてこう記されているものの、これだけだとイマイチわかりにくい。もっと別の理由があったとしてもおかしくはない。

では、その真意は何か。それを探るため、東洋経済は飲料業界担当記者を通じて、なだ万の楠本正幸社主兼社長に取材を申し込んだ。だが、なだ万担当者は「楠本社主兼社長の取材はいっさいお受けできない。ほかのメディアからの依頼も断っている」と回答した。少なくとも11月21日時点では取材は実現していないし、その予定もない。

M&Aは金融機関が仲介

なだ万関係者によると、今回のM&Aはある金融機関からアサヒビール側に要請があり、アサヒビールが応じた案件だったという。別の関係者は「なだ万は実質無借金の堅実な経営をしている」と話すが、「なだ万側からは数年前から事業譲渡について相談があった」(アサヒグループホールディングス広報)という話もある。

これ以上の詳しいことはわからないが、なだ万が過半の株を手放して「身売り」する裏側には、180年以上の歴史を持つ老舗企業が大手企業の傘下に入らなければならない、よっぽどの事情があるのかもしれない。なだ万が取材に応じない間は、少なくとも憶測は飛び交い続けるだろう。

三上 成文 フードアナリスト・ブランディングプランナー

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みかみ しげふみ / Mikami Shigefumi
外食大手企業での現場経験を経て、広告代理店にて広告営業を経験。2009年、当時のクライアントであった外食ベンチャーにて、ブランディング/PRに携わり、自社PRだけでなく、地方自治体や他社との業務提携PRを担当。2014年12月より、海外人気店の日本展開PRに携わる。

 

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