イタリア人が「ロシアの戦争」から受ける深刻影響 5万人以上の「ウクライナ避難民」を市民が支援

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3月15日、トリノ市内のガソリンスタンド。どんどん上がっていく値段に恐怖さえ覚えた(筆者撮影)

ガソリンは一時1リットル2ユーロ50セント近くまで高騰した。公共交通機関が日本ほど発達していない車社会のイタリアでは、とても深刻な問題だ。一般ドライバーだけでなく、輸送費の値上がりからさまざまなものの値上がりが予想された。運送業のトラックドライバーたちはストライキを起こした。危機感を抱いた政府は減税を決定。3月22日の火曜日から、1リットルにつき25セントの税が段階的に削除されることになり、かろうじて1ユーロ代に戻ることになった。だが、平均給与が手取り1700ユーロのイタリア庶民にとって、1ユーロ代後半ではそもそも高すぎる。しかも税カットは4月いっぱいだけの暫定措置だという。それでは不足だとして、運送業者のストライキは4月にも再度予定されている。

小麦粉類、パスタ類の棚がスカスカ

一方、ウクライナとロシアはヨーロッパの重要な穀物生産地だから、特に小麦粉、サンフラワーオイルが足りなくなる、値段が高騰するというニュースが2月後半にテレビ、ネットを賑わした。買い占めが起きるかもしれないな、そう思った私は、普段はあまり行かない大型スーパーに行ってみた。すると思った通り、小麦粉類、パスタ類の棚がスカスカになっていた。パスタやパンが食の基本であるイタリアで、小麦粉が手に入らなくなるのは恐怖である。思わず私もいつもより多めに買ってしまった。ところがその10日後には、品揃えは普通に戻っていたので、買い占めによる一時的品薄だったのかもしれないが、戦争が長く続くようであれば、この先どうなるかはわからないという不安は常につきまとう。

3月7日土曜日、トリノ市内の大型スーパー。小麦粉類、パスタ類の棚がスカスカになっていた(筆者撮影)

スーパーではサンフラワーオイルも品薄が目立っていた。イタリアにはサラダオイルというものは存在せず、イタリア料理に必須のオリーブオイルのほか、揚げ物などにサンフラワーオイルがよく使われるのだ。しかも私のような在住日本人が日本料理を作る場合、個性の強いオリーブオイルでは味が変わってしまうから、サンフラワーオイルは貴重な存在だ。トリノで和食レストランを経営する友人によれば、レストラン業者にはサンフラワーオイルの購入制限がかけられたという。

そしてロシアに科している経済制裁は、ロシア経済を痛めつけるだけでなく、イタリアの経済にも大きな打撃となることは明らかだ。イタリア中の観光地にも、ミラノやローマの高級ブランド街にも、近年ロシア裕福層の観光客が目立っていたが、そんな人たちが姿を消したら? イタリア自慢の高級自動車を買わなくなったら?

経済的な心配ばかりではない。追い詰められたプーチンがウクライナに向けて核のボタンを押した場合、被害はウクライナだけに止まらないと言われている。ロシア軍が欧州最大という原発を攻撃し火災が起きた3月4日の朝には、イタリアでもその話題で持ちきりだった。オランダに住む友人は、安定ヨウ素タブレットが売り切れ続出だと言っていた。安定ヨウ素タブレットとは、放射線ヨウ素が甲状腺に溜まるのを防ぐ効果があるというものだ。でも私の周りではそんな話は聞こえてこなかった。

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