2022年2月24日にロシアがウクライナへ侵攻してから1カ月が過ぎた。日米欧など主要7カ国(G7)はロシアに厳しい経済制裁を科し、中でもアメリカドル決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除は、ロシア経済に大打撃を与えるとされる。アメリカは中国による制裁「すり抜け」を警戒し、SWIFTを通さず取引可能な「デジタル人民元」の役割に着目する。中国はデジタル人民元をドル覇権弱体化の「切り札」にする。
中国にアメリカが制裁すり抜けを警告
ウクライナ侵攻が膠着状態に入った2022年3月18日、アメリカのバイデン大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談(オンライン)に臨み、1時間間50分にわたって協議した。バイデンは習に経済制裁について説明した後、「中国がロシアに物資的支援をした場合の影響と結果について説明した」という。バイデンが会談を開いた狙いが、中国の「制裁すり抜け」に警告し、くぎを刺すためだったのは明らかだ。
これに対し、習は制裁について「世界の経済貿易、金融、エネルギー、食糧、産業連関、サプライチェーンに深刻な危機が起き、すでに困難な世界経済をさらに悪化させ取り返しのつかない損失をもたらす」と、反対の理由を説明した。
バイデンは2022年3月24日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議後の記者会見で、習との電話会談を振り返り、中国が対ロ支援をした場合、中国経済が受ける影響について説明したのに対し、習は「理解した」と答えたと明らかにした。バイデンは「中国は自分たちの経済関係が、ロシアより西欧諸国に近いことを理解している」とも語った。
バイデン政権が、中国の制裁「すり抜け」を警戒するのは、米中関係の険悪化と反比例して、中ロ関係が緊密化しているからである。ウクライナ情勢が緊迫化し始めた2022年2月4日、プーチン大統領は北京に飛び、習氏との首脳会談に臨んだ。
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