デジタル人民元で対ロシア制裁すり抜けは可能か ドル覇権の弱体化を狙う中国の思惑

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会談後の共同声明によると、双方は①北大西洋条約機構(NATO)拡大に反対、②米政府のインド太平洋戦略が地域の安定を脅かすと批判、③中ロの新国家間関係は冷戦時代の政治的および軍事的同盟よりも優れていると評価、④政治と安全保障、経済と金融、人道的交流の3つの主要分野での協力を拡大――と共通認識を挙げた。

プーチンは訪中直前の新華社への寄稿(2022年2月3日)で、「中ロは(ドルを介さない)両国通貨決済を継続的に拡大し、一方的制裁の悪影響を埋める仕組みをつくってきた」と書いた。あたかもSWIFT排除を予期したかのような表現だ。さらに2国間貿易額を2022年には前年の1400億ドル(約16兆円)から、2000億ドルへ4割増やすとした。

制裁に話を戻す。米欧日はプーチンやその周辺と、「オリガルヒ」(新興財閥)の海外資産凍結をはじめ、ロシアの「最恵国待遇」を取り消し、原油禁輸などの経済制裁を科した。中でも、ロシアの銀行7行をSWIFTから排除する制裁は、ロシアの国際的な金融決済を機能不全に陥れる可能性がある。

SWIFTは本来、国家間決済を円滑化するための仕組みだ。しかし中国は、アメリカがイランにSWIFT排除の制裁を科したのをみて強力な制裁ツールになったことを悟った。ロシアは2014年、ロシア中央銀行の金融メッセージングシステム(SPFS)の運用を開始した。続いて中国も2015年、人民元による国際銀行間決済システム(CIPS)を導入した。

プーチンは習との会談で「中ロは(ドルを介さない)両国通貨決済を継続的に拡大した」と述べた。しかし人民元やルーブルを使う銀行間決済システムを通じる国際決済の大半は、送金指示などのやり取りはSWIFTを使っており、中ロの取引はすべて捕捉されている。

デジタル人民元の推進に3つの背景

そこで登場するのが、中国中央銀行が発行するデジタル人民元だ。中国は2014年から開発を始め、2020年10月から深圳など28都市で市民参加型の実証実験を行っている。2022年2月の北京冬季五輪で、初めて外国人向けに提供した。2022年中に正式発行するとされるが、まだ正式発表はない。

デジタル人民元発行の背景はいくつかある。第1は、国家が関与しないビットコインなど暗号通貨取引が膨張したこと。放置すれば、中央銀行による金融システムが崩れかねない。同時に、資金洗浄(マネー・ローンダリング)に悪用される恐れもある。

第2に、国が民間から決済手段を取り戻しビッグデータ活用が可能になる。中国ではスマホの普及によって電子マネー決済が急成長した。「アリペイ」は利用履歴をビッグデータとして活用し、個人の経済能力指標である「信用スコア」を使って急成長した。デジタル人民元が主要な決済手段になれば、国が取引情報を掌握しビッグデータとして活用できる。

第3は人民元の国際化だ。デジタル人民元ベースの国際決済にはドルが介在しないため、長期的にはドルの国際的影響力が弱まる可能性がある。

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