インドネシア高速鉄道、一転「国費投入」の理由 国営企業の出資が不足、「準高速」に変更も?
ジャカルタ―バンドン高速鉄道の開業予定時期が二転三転する間に、東南アジアではラオスに最高時速160kmの準高速鉄道といえる中国ラオス鉄道(総延長422km)が開業した。同鉄道は2016年に着工し、総工費はおよそ70億ドル(約8345億円)、うち約7割が中国政府及び銀行融資によって賄われ、金利は2%と、規模、スキーム共にジャカルタ―バンドン高速鉄道と極似している。
また、中国で2022年の北京冬季オリンピックに合わせ開業した高速鉄道「京張都市間鉄道」はトンネルも多く含む区間、およそ170kmの距離を4年半で開業させている。オリンピック開幕前には、中国政府管理下にあるインフルエンサー系女子による「京張都市間鉄道」の宣伝(もちろんインドネシア語で)がプロパガンダのごとくSNSに何度か表示された。
インドネシアも2015年にすぐ着工していれば、2019年になんとか間に合った可能性はある。こうなると、原因はインドネシア側にあると言わざるを得ず、これ以上遅れては、本当に中国に合わせる顔がなくなるだろう。
さらなる「計画修正」の可能性
KCICへの出資率の変化による計画修正は、ワリニ駅凍結とパダララン駅の新設以外にも可能性がある。
主要幹線の複線化がほぼ完了したKAIは次のステップとして、2021年に最高速度を時速120kmに引き上げた。さらに今後は160km運転を目標としている。しかし、主要幹線の1つであるジャカルタ―バンドン線区のうち、山越え区間となるプルワカルタ―パダララン間は複線化はおろか、カーブが多く、高速化の対象外である。そのため、現状の在来線特急は、ジャカルタ―バンドン間(約170km)で3時間半程度を要する。
コロナ禍前の時点で同区間には1日最大20往復程度が設定されていたが、単線区間での上下行き違いは限界に達しており、これ以上の輸送力増強、速度向上は新線の建設以外にない状況であった。高速鉄道開業後の在来線特急の扱いについては長らく公言されてこなかったが、ついに在来線特急廃止の方針も示された。
競合が1つ消えたことで、高速鉄道が時速360kmでジャカルタ―バンドン間を45分で結ぶ必要性は薄れたことになる。
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