インドネシア高速鉄道、一転「国費投入」の理由 国営企業の出資が不足、「準高速」に変更も?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

インドネシア国営企業コンソーシアムはKAIのほか、建設工事を請け負う国営建設ウィジャヤカルヤ(WIKA)、国営高速道路会社ジャサマルガ(Jasa Marga)、それに第8国営農園(PN Ⅷ)の4社からなる。

不足額の内訳は、WIKAが約2400億ルピア(約19億9400万円)、KAIが約4400億ルピア(約36億5600万円)、PN Ⅷが約3.14兆ルピア(約260億9300万円)、Jasa Margaが約5400億ルピア(約44億8700万円)と報じられている。KAIをはじめ、各社はコロナ禍で大幅な減収となっていることを出資遅延の理由としているが、その中でもPN Ⅷからの不足額が突出している。当初予算の55億ドルから逆算してゆくと、PN ⅧからKCICへの出資はゼロの可能性が高い。

そもそも、高速鉄道とは何ら関係ないように思える高速道路会社のJasa Margaと国営農園のPN Ⅷがコンソーシアムに連なっているのはなぜか。これは、中国側が示した高速鉄道ルートに関係している。

高速道路や農園が建設ルートに

中国は2015年当時、わずか4年という短い工期を約束したが、早期着工を目指すべく民間用地をなるべく避けるルートが選定された。すなわち、平坦区間ではJasa Margaが所有する高速道路脇の緩衝地帯に、山間部はPN Ⅷ所有の畑やその下にトンネルを通すことで、高速鉄道は建設されている。

KCIC本社に設置された、各駅の周辺開発を示す巨大な都市模型。写真はテガルアール周辺(筆者撮影)

また、両端のターミナルは市街地の外れに設置され、日本案と異なり、市内中心部には乗り入れない。バンドン側のテガルアール駅の周辺は一面の田畑である。中間駅も同様で、あえて何もないところに駅を設け、周辺開発とセットで利潤を生みだすというのが、中国が提案した民間ベースの高速鉄道プロジェクトである。

ワリニ駅周辺に開発を予定していた「ワリニ・ラヤ」の模型(筆者撮影)

この中で、PN Ⅷは、2018年10月25日付記事「ついに着工『インドネシア高速鉄道』最新事情」で紹介したとおり、高速鉄道駅(ワリニ駅)を中心とした一帯の土地開発を構想していた。総面積は最大7652ヘクタールにもおよび、うち1270ヘクタールが「ワリニ・ラヤ」と呼ばれる緑に囲まれたニュータウンに生まれ変わる予定だった。ジャカルタまで高速鉄道でわずか25分の距離を売りに、新たなライフスタイルを提案していた。

次ページPN Ⅷが抱えていた大問題
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事