インドネシア、地方都市に広がる「空港鉄道」の波 建設や車両は国産化進むが、電化方式は日本式
インドネシア、ジョグジャカルタ近郊の鉄道にとって2021年は歴史的飛躍の1年となった。2月のジョグジャカルタ―ソロ間の電化開業に引き続き、9月1日、ジョグジャカルタ国際空港と市内を結ぶ待望の空港鉄道が営業運転を開始した。
今年に入り、デルタ株を含む新型コロナウイルスの猛威に晒されたインドネシアであるが、新規感染者数もようやく収まりを見せ、まもなく一部観光地域から観光客の受け入れが再開される見込みである。ジャワ島随一の観光地であるジョグジャカルタの経済は、この1年半で大きく疲弊した。それだけに、空港と市内を直結する空港鉄道に対する期待は大きい。
市内から遠い新空港
ボロブドゥール遺跡、そしてプランバナン遺跡と2つの世界遺産を擁するジャワ島中部の都市、ジョグジャカルタには従来、市内中心部からほど近いアジスチプト国際空港が存在していた。離発着する航空機が市内の真上を飛び、騒音が気になることもあったが、その反面アクセスは良好だった。車でも30分あれば余裕で到達できたうえ、国鉄(KAI)のマグウォ駅とも地下通路で直結していた。
しかし、この空港は空軍基地を間借りする形での暫定的な空港で、一見国内線専用かと思えるほどターミナルが狭く、増える観光客に対応できずに問題となっていた。そこで、新空港として開業したのがジョグジャカルタ国際空港である。2019年5月から旧空港発着の一部便を移管、2020年3月に完全移行して本開業した。
ただ、新空港はジョグジャカルタ市内から40km以上も西に離れており、空港周辺は見渡す限りの田園地帯である。ようやく、ソロ―ジョグジャカルタ―新空港間を結ぶ高速道路の建設が着工したが、用地買収の問題もあり開業は当面先になる。現状、一般道経由ではタクシーや借り上げの車で1時間半、バスでは2時間弱を要する。
このような立地条件から、当初から空港ターミナルは鉄道の乗り入れを前提に設計されていた。2020年の時点で、鉄道駅はまだ姿を現していないにもかかわらず、構内には鉄道駅の案内表示がそこかしこに設置されていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら