試走で衝突、インドネシア「国産LRT」が抱える問題 政府要求「無理な工期」と安全意識欠如が重なる

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ジャカルタで建設中の「LRTジャボデベック」で試運転中に衝突した車両(写真:AA/時事通信フォト)
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インドネシアの首都ジャカルタ郊外で10月25日、建設中の軽量高架鉄道「LRTジャボデベック」の試運転車両が停止中の車両に追突する事故が起きた。先頭車両は大破したが試運転のため乗客はおらず、運転していた作業員は負傷したものの命に別状はなかった。

LRTジャボデベックはジャカルタ都心と郊外のブカシ市・デポック市を結ぶ国営の軽量高架鉄道で、2022年8月の開業を目指し、現在急ピッチで準備が進んでいる。10月17日には31本目の電車が国営車両製造(INKA)マディウン工場から搬入されてすべての車両が揃い、開業に向けてまた一歩前進した矢先の出来事であった。

鉄道の国産化を推進するインドネシア。「国産LRT」という触れ込みの路線で起きた事故の背景を探ると、同国のインフラ整備をめぐる課題が浮かび上がる。

「突如」着工した国営LRT

国営LRTジャボデベックは、2015年9月に突如工事が始まった。土木は国営建設会社アディカルヤ、信号・通信を国営信号会社LEN、車両を国営車両会社INKAがそれぞれ担当し、運営は国営インドネシア鉄道(KAI)が担う。

ハルジャムクティ駅に入線する試運転列車(左)と留置中の車両(筆者撮影)

路線はジャカルタ都心を起点に途中で2方面に分岐し、都心のドゥクアタス―チャワン間約11kmは主に一般道路の直上、チャワンから分岐してブカシティムールまでの約18.5km(ブカシ線)とハルジャムクティまでの約15km(チブブール線)は高速道路脇の緩衝地帯に建設。自動運転で、朝ラッシュ時は最短3分間隔で運行する計画だ。

同区間には2012年ごろ、国営の中量輸送システムとして国産モノレールの建設が計画されたことがある。当時、ジャカルタ都心部にはシンガポール資本による民間モノレール(JM:ジャカルタモノレール)の建設計画があり、国産モノレール計画は、これに対してナショナリズムを高揚させる意図があったと考えられている。しかし、JMは資金調達の目途が立たず頓挫。国産モノレールも建設する意義がなくなってしまい、一度は中量輸送システムの導入計画自体が凍結された。

しかしその後、国営中量輸送システムの構想は再燃することになる。引き金となったのはやはり外国技術による軌道系交通の整備だった。

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