コロナ禍で子どもの「読む力」急落している実態 読解力低下を憂慮すべきこれだけの理由
テキサス大学オースティン校の失読症専門家ネイサン・クレメンスは、マスクが読解力の発達の妨げになっているというのは「現時点では単なる臆測にすぎない」と述べた。
ミシシッピ州、アラバマ州、マサチューセッツ州などでは、フォニックスに関する教員の再訓練に加え、時代遅れになったカリキュラムの改廃が始まっているものの、こうした取り組みの中にはパンデミックが原因で中断したり遅れが出たりしているものもある。
個別指導サービス流行で劣化する公教育
ボストンで研究を行うホーガンは、極貧地区の学校で早期読解力に遅れが出ている子どもに集中的な少人数指導を施す連邦助成金を受けているが、そのホーガンも教員集めに苦労している。時給を15ドルから最高40ドルに引き上げても、教員の空きを埋められないというのだ。
裕福な家庭の子ども向けに読解の個別指導や言語療法の個人カウンセリングを行うサービスの需要が急増していることも、公立学校や政府支援プログラムには逆風となっている。こうした個別サービスの料金は1時間当たり200ドルになることもあるため、公立の学校を辞めて転職する教員もいる。
ジョンズ・ホプキンス大学で博士号を取得したフォニックス専門家タマラ・セラは2016年にニューヨーク市の公立学校を辞め、現在はニュージャージー州の私立学校で働く傍ら、副業としてフォニックスの個別指導サービス企業「ブルックリン・レターズ」の家庭教師をしている。
「家庭教師の報酬はすごくいい」
そう認めるセラが家庭教師として教えるのは、音と文字が結び付けられなかったり、単純な文章を理解する練習から本を読むことに移行するのに苦しんでいたりと、これまで公立校で教えていた生徒と同じ問題を抱える子どもたちだ。しかしセラは、公立の学校で教えていた子どもたちのほうが、もっと心配だと話した。
「罪悪感を感じている。ブロンクスの子どもたちはどうなっちゃうんだろう、って」
(執筆:Dana Goldstein記者)
(C)2022 The New York Times Company
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