鉄道各社が求める上限運賃制度「見直し」の問題点 IC乗車券普及で需要予測は以前より容易なはず

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IC乗車券の普及で鉄道利用の需要予測がかつてより立てやすくなっている(写真:まちゃー/PIXTA)

国土交通省が「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」を開催している。現在の運賃や料金の決め方についての制度が定められてから20年以上が経過しており、鉄道を取り巻く事情の変化や安全性向上の対策が急務となっていることや、多様化する利用者ニーズに適切に対応できるようにするために、今日的視点から検証を行う。

「問題意識としてあった」

どのような経緯があるのか。同省に話を聞くと「2021年5月に決定された第2次交通政策基本計画を契機に、それまで問題意識としてあった現行の鉄道運賃制度の再検討を行うことになった」という趣旨であった。

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検証対象は総括原価の計算方法やその基準としての妥当性、認可対象の選定など多岐にわたるが、その基本となる上限運賃について考えてみたい。

現行の鉄道運賃認可制度は以下のとおりである。

鉄道事業者が運賃を改定するには、国交省から上限運賃額の認可をうける必要があり、自由に青天井で輸送サービスの対価である運賃を決めることができない(鉄道事業法第16条第1項)。特急料金、グリーン料金、寝台料金などの速達サービスや特別施設の使用料金は事前に届け出をすれば足りるが(同第16条第4項、同施行規則第34条第1項)、新幹線特急料金は運賃と同様に認可が必要である(同第16条第1項、同施行規則第32条第1項)。

運賃の認可を受ける場合、「適正な原価に適正な利潤を加えた額」(総括原価)が認可後の運賃による総収入を超えてはならない、という枠組みがある(同第16条第2項)。鉄道事業は始めるにあたって莫大な資本の投下が必要になり、維持をするにも多くの経費が必要になる。したがって、鉄道事業者は投下資本を速やかに効果的に回収したい。

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