鉄道各社が求める上限運賃制度「見直し」の問題点 IC乗車券普及で需要予測は以前より容易なはず

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移動ニーズが拡大する時期に上限運賃を超える運賃を設定し、減少する時期は大きく下回る運賃を設定することで平準化させるようにしつつ、総括原価の範囲内で収入を最大限に上げるという方法が考えられてもよい。利用の仕方によってポイント付与によるインセンティブなどで需要を誘導をすることも可能である。上限運賃を超えても総括原価の範囲内に収入を抑えるような操作は不可能ではないだろう。

鉄道は日常的に利用する交通機関だから、毎日運賃が細かく変動するというようなことは望ましくないかもしれない。日々変動をすることはなかったとしても、平日・土曜日・日曜日・祝日の違いであるとか、同じ土日祝日であっても連休であれば需要は変わることがある。

連休の長さによっても変わるし、平日ですら連休の谷間はほかの平日と性質が異なる。1日のなかでも時間帯によって差がある。時期ごとに予測を立てておいて、その時期の運賃を予告しておくことは可能だろうし、大幅な変動でなければ利用者の負担も大きくはならない。

ほかに議論すべき問題は多い

ほかにも、現在は認可制になっている新幹線の特急料金についてほかの料金同様届出制にすることの当否、安全性対策等の投資確保のための収入確保、採算の厳しい路線の運賃をどうするか、他の交通機関とのスムーズな運賃のつながりなど、議論の対象になるものは多いようである。

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もっとも、採算の厳しいローカル線維持のための運賃制度については、もともと地域の限られたものでしかない移動需要が鉄道よりはるかに機動的な自動車に取り込まれてしまっている状況なので、より公共性に着目した支援を充実させる方が望ましいようには思う。

5年後、10年後に向け、運賃制度をどのように変えていくのか。運営が適正になされかつ利用者が利用しやすい鉄道が維持されるための重要な局面を迎えている。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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