意外な事実、IC乗車券はあなたの所有物でない ルール上は「発行者が利用者に貸与している」

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日ごろ何気なく使っているICカード乗車券にも、さざまざなルールが存在する(写真:tkc-taka/PIXTA)
日ごろ鉄道を利用したり、鉄道趣味を楽しんだりする際に、知っておきたいルールや素朴な疑問について、弁護士である筆者が新著『鉄道好きのための法律入門』で、法律の知識に基づいてQ&A方式で解説しています。
同書より一部を抜粋・再構成しお届けします。
Q. ICカード乗車券は誰のもの?

A. 発行者のもの。発行者は利用者に貸与している

「Suica」や「PASMO」に代表されるICカード乗車券は今やなくてはならない乗車手段である。きっぷ好きの私でも記念に買う以外は紙のきっぷを買う機会が激減した。ICカード乗車券は不思議な乗車券である。普通乗車券や回数券、定期券のように限られた回数、期間で役割を終えて回収されることはない。デポジットとして一定額を納めて発行を受けたのちは、改札機や券売機を通して何度でも鉄道を利用できる。

実は利用者の所有でない

実はICカード乗車券は利用者に貸与されるものであって、利用者の所有には帰属しない(JR東日本ICカード乗車券取扱規則第5条等)。ICカード乗車券の規則を見ると、ICカード乗車券に関わる鉄道会社と利用者の契約は大きく分けて2段階ある。第1段階は、ICカード乗車券を発行して利用者に交付したときで、ICカード乗車券そのものの貸与に関する契約が発生する(規則第4条)。

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第2段階はICカード乗車券を利用して列車に乗るとき。ICカード乗車券を乗車駅の改札機にタッチして通過したときに個別の乗車に関する運送契約が発生する(規則第20条)。目的地の駅で下車すると、個別の運送契約は終了するが、貸与に関する契約が終了するわけではなく、個別の運送契約を繰り返し一枚のICカードで行うことを前提としているから回収されることもない。

ただ、不思議なのは、「東京駅100周年記念Suica」のような記念ICカード乗車券である。これも貸与であるはずである。しかし返す利用者はほとんどいないだろう。事実上返すことが前提になっていない貸与。実はすごいことだと密かに思っている。

次ページでは「個別の運送契約」はいつ決まる?
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