運賃値上げ議論が本格化、「JR・私鉄」交錯する思惑 オフピーク定期券、届出制、有事への備え…
新型コロナウイルス感染拡大の渦中でくすぶっていた鉄道運賃の値上げ議論が本格化した。国の交通政策審議会による「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」が2月16日に始まったのだ。
JR北海道を除くJR旅客5社は、消費税率引き上げに伴う値上げを除けば、過去20年間にわたって実質的な運賃値上げを行っていない。大手私鉄も一部の会社による特々制度の取り崩しに伴う運賃改定を除けば、やはり消費税引き上げに伴う値上げにとどまる。
運賃が抑えられている一方で、激甚化する自然災害への対応や駅のバリアフリー、列車内の安全対策など、これまで以上に設備投資が必要となりつつある。今回の議論はこうした事業環境の変化を踏まえたものだ。
6月下旬に「中間取りまとめ」
コロナ禍がもたらした旅客の大幅減で各社の収益が大幅に落ち込んでいる。その意味で運賃値上げは手っ取り早い増収策となるが、斉藤鉄夫国土交通相は、2月18日の定例会見で「本委員会はこうした状況への直接的な対応策を議論する場ではない」とクギを刺した。あくまで「事業環境の変化に事業者が適切に対応し、利用者ニーズに即した、より良いサービスを持続的に提供できるようにする運賃・料金制度を検討する場」という位置付けだ。
なお、コロナ禍とは別に、地方鉄道は沿線人口の減少による旅客収入の減少にあえぐが、この問題については別途開催されている「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」でも議論されている。
3月1〜2日および11日に鉄道事業者、経済団体、消費者団体などへのヒアリングが行われた。その後は論点を整理した上で、6月下旬には中間取りまとめを発表するというスケジュールだ。
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