運賃値上げ議論が本格化、「JR・私鉄」交錯する思惑 オフピーク定期券、届出制、有事への備え…

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鉄道運賃は「上限認可制」が採用されている。運賃はその上限について認可を得ることとし、その範囲内であれば届出により設定・変更が可能というものである。国は「上限認可制の下で季節別、時間帯別など多様な運賃の設定が可能」としているが、大半の鉄道事業者が上限運賃を実際の運賃としているので、値上げ余地がないというのが実情だ。

なお、運賃以外の料金については、新幹線特急料金は上限認可制が採用されているが、在来線特急料金、座席指定料金、グリーン料金などは認可よりも緩やかな事前届出制が採用されている。

ほかの交通モードでは、タクシーは認可制が採用されている。路線バスは上限認可制だが地元自治体、事業者、住民等の協議がととのった場合は届出による運賃設定が可能となる。一方で、国内航空と高速バスは事前届出制を採用している。

JR各社が行った説明は?

鉄道運賃の審査基準は改定後の運賃が人件費、経費、減価償却費、支払利息といった原価に適正な利潤を含めた「総括原価」を超えないかどうかがポイントとなる。その際、線路比、車両費、列車運転費といった事業者間で比較可能な費用についてはJR旅客6社、大手私鉄15社、地下鉄10社などのグループ化を行い、回帰分析によって事業者ごとの基準コストを算定し、実績コストと基準コストの比較から適正コストを算定している。なお、基準コストの算出方法は1999年以降変更が行われていない。

運賃改定時の収支計算においては、原価計算の期間は平年度3年間とされている。この「平年度」というのがポイントである。コロナ禍の期間は平年度ではないと考えれば、それに伴う収入の激減は原価計算に反映されないことになる。

さて、各社はヒアリングの場でどのような説明を行ったのだろうか。JRではJR東日本、JR西日本、JR東海、JR九州の4社が出席した。JR北海道とJR四国へのヒアリングは行われなかった。両社とも経営が厳しく、「運賃値上げよりも経営支援が話のメインになってしまう可能性がある」と国交省鉄道局の担当者は、ヒアリング対象から外した理由を説明する。

各社が委員に配布した資料のボリュームはまちまちで、JR東日本の資料は18ページあったが、JR東海は表紙を含めても同4ページだった。運賃制度見直しに対する各社の温度差がうかがえる。各社の発言の持ち時間は最大15分ということだったが、説明内容が多岐にわたるJR東日本は持ち時間をオーバーしたという。

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