「運賃値下げ検討」北総が抱える線路使用料の実態 京成の支払額「安すぎ」との指摘は正しいのか
千葉ニュータウンと都内を結ぶ北総鉄道。首都圏有数の高額な運賃で知られる同社は2021年6月、「運賃値下げの可能性の検討に着手する」と発表し、9月には千葉県の熊谷俊人知事が県議会一般質問で、同社社長から2022年秋ごろに「通学定期運賃の大幅な値下げ、北総線内の移動の促進に資する普通運賃の値下げ」を実施する方向で検討しているとの報告を受けたと明らかにした。
ただ、運賃の値下げ幅については明らかにされていない。どの程度の値下げが可能なのか、そもそも北総線の運賃が抱える問題とは何なのか。2021年10月7日付記事(「高額運賃の北総鉄道『大幅値下げ』は簡単ではない」)では長年黒字経営を続けながらも運賃が高額な理由について検証したが、今回は北総の収入・支出に多大な影響がありつつもその実態をつかみにくい「線路使用料」について検証したい。
北総と京成で大幅に違う「線路使用料」
2010年に開業した京成の成田空港線(成田スカイアクセス線)は、京成高砂―印旛日本医大間で北総線と線路を共有しており、設備の保有者である北総に線路使用料を支払っている。厳密には小室―印旛日本医大間は京成の100%子会社である千葉ニュータウン鉄道(CNT、2004年に都市基盤整備公団から設備を取得し設立)が所有しており、京成は京成高砂―小室間の線路使用料を北総に支払い、北総と京成は小室―印旛日本医大間の線路使用料をCNTに支払っている。
各社とも線路使用料は公表していないが、国土交通省の発行する「鉄道統計年報」などの公開情報、鉄道・運輸機構への情報開示請求、そして北総線沿線住民で組織された「北総線の運賃値下げを実現する会」(北実会)が取得し、同会ウェブサイト(現在は閉鎖)で公開していた各種資料などを掛け合わせることで、その実態が見えてくる。
成田スカイアクセス線の開業にあたり、同線の旅客運賃の上限設定の認可申請について審議した2010年度運輸審議会第5回の資料によれば、開業後に京成が支払う線路使用料は北総に年間約15億円(2018年度実績値では約17億円)、CNTに約3億円とされている。鉄道統計年報によれば、CNTが受け取る線路使用料は約28億円なので、北総がCNTに支払う線路使用料は差し引き約25億円だ。
つまり、小室―印旛日本医大間は京成が3億円で利用しているのに対し、北総は25億円を支払っていることになる。
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