「運賃値下げ検討」北総が抱える線路使用料の実態 京成の支払額「安すぎ」との指摘は正しいのか

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北実会は、京成と北総がCNTに支払う線路使用料の差について、同じ区間を走行しているのに大幅に異なるのはおかしいと指摘しており、共産党の斉藤和子元衆議院議員も2016年に同様の内容の質問主意書を提出している。

問題をややこしくしているのが京成と北総、CNTでそれぞれ交わされた契約の違いだ。CNTは自ら列車の運行はせず、保有する設備を他の事業者に使用させる「第三種鉄道事業者」である。一方、小室―印旛日本医大間における京成と北総は、CNTの設備を利用して列車を運行する「第二種鉄道事業者」となる。

2010年2月、京成は沿線自治体に対して、線路使用料は「第二種鉄道事業者が使用する施設保有事業者の鉄道設備に係る建設費等の資本費相当分に基づき算出」すると説明しており、京成が北総およびCNTに支払う線路使用料もこれに基づき算出されたとしている(実際の計算方法は後述する)。

京成が北総に払う額は安すぎる?

一方、北総がCNTに支払う線路使用料はこの原則とは異なっている。北総はCNT設立以前に小室―印旛日本医大間を保有していた住宅・都市整備公団との間に、CNTの累積損失が解消するまでCNT区間の運賃収入相当額を線路使用料として支払う契約を締結しており、CNTもこの契約を引き継いでいる。その結果、京成がCNTに支払う線路使用料が約3億円なのに対し、北総のそれは約25億円と大きな差が生じている。

ただ、この数字のみを比較して不公平というのは早計だ。京成が利用するCNTの駅はアクセス特急の停車駅に限られているうえ、CNTが保有する印旛車両基地は北総のみが使用するなど、京成と北総では設備の利用範囲が異なるからだ。また、CNT線内における北総の列車運行により発生するコストはCNTが負担することとされており、CNTから北総への支払いもあるため、京成と北総の線路使用料の違いについては単純に比較できないのである。

ちなみに2008年度に約21億円だったCNTの累積損失は2018年度に約14億円まで減少したが、その後再び赤字が拡大して2020年度は約17億円となり、解消のメドは立っていない。CNTの累積損失が解消されれば、線路使用料の減額分を値下げの原資とすることも可能だが、当面は実現困難だろう。

線路使用料に関しては、京成が北総に支払う額が安すぎるのではないかという指摘もある。例えば北総線区間を走る日中1時間当たりの列車本数を比較すると、北総線が3本に対し、成田スカイアクセス線はアクセス特急1.5本、スカイライナー3本(2021年10月14日時点では減便中)の合計4.5本だ。それなのに北総線の鉄道営業収益約177億円に対し、線路使用料約17億円は1割にも満たない。京成のほうが多く利用しているのに、負担が少ないという主張だ。

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