「運賃値下げ検討」北総が抱える線路使用料の実態 京成の支払額「安すぎ」との指摘は正しいのか

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ただ、これにも異論がある。成田空港への鉄道輸送は当初、東京駅から空港まで約30分で結ぶ「成田新幹線」が担うことになっていた。ところが沿線自治体の反対運動により計画は頓挫。そこで1980年代に入って在来線による新線整備の検討が始まり、1984年に決定したのが北総線経由のいわゆる「Bルート」だった。

もっとも1977年時点でも「成田特急新線具体化へ 北総鉄道線と連絡」との報道(同年11月16日付朝日新聞夕刊)があるなど、北総線を活用した成田空港アクセス路線新設の構想は古くから存在していた。Bルート決定の前年に着手した北総線第2期線も、将来の高速運転に備えた高規格路線として設計され、優等列車運転拡大に備えた準備工事もしていた。

これら空港アクセスを見越した施設の追加により高額化した建設費の返済を、北総線利用者が高額運賃という形で負担しなければならないのはおかしいという批判がある。確かに1991年の第2期線開業から2010年の成田空港アクセス線開業までの約20年間、有効活用されなかった「過剰設備」であることは否めず、本来、京成が負担すべき設備投資を北総が肩代わりした結果が建設費の増加を招いたという指摘は一理ある。

一方で現時点での線路使用料の算定に関しては、後述するようにそうした設備も含めた固定資産を元に算出されており、決して京成が「タダ乗り」しているわけではない。

京成が支払う線路使用料の算出方法は

では、京成が北総に支払う線路使用料はどのように算出されているのか。

京成が2010年2月に千葉県に対して行った説明によれば、京成は北総鉄道が保有する鉄道施設のうち京成が使用する分について、鉄道事業用固定資産の平均残存耐用年数(31年)と鉄道・運輸機構および日本政策投資銀行からの借入金の平均金利(1.95%)をもって、元利均等払いの場合の年間償還額を算出し、さらに租税および管理費相当額を加えた額に、北総に対する京成の車両走行キロ割合を乗じることによって負担額(約15億円)を算出するとしている。

先述の線路使用料約17億円との差異は、北総が運行する列車から京成のアクセス特急に乗り換える旅客と、北総線が成田空港と直結されることによって新たに発生する旅客に係る運賃収入額の一部を線路使用料に上乗せして北総に支払うこととしているためだ。

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